研究課題/領域番号 |
24685034
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
有田 稔彦 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (50423033)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子系複合材料 / ナノ材料 / 複合材料・物性 / 自己組織化 / フォトニック材料 / 高機能フィラー / ゴム |
研究概要 |
平成25年度は、実施計画通りゴム材料の力学特性向上に研究の重点を移して研究を行った。粒子共存逐次リビングラジカル重合法により、ゴム(特にタイヤのトレッドゴム用)コンパウンドの力学特性向上に欠かせないシリカ(ホワイトカーボン)を高分子(ブロック共重合体)で被覆し、ゴムと混練し、その力学特性を評価した。その結果、(本来は混和しないゴムとシリカの相溶性向上のために)従来は必要不可欠と考えられていたシランカップリング剤を用いることなく、ゴムとシリカを混練出来るようになったほか、現在までの最適配合のデータと比較しても大幅に力学特性を改善できることがわかった。 このゴムの力学特性改善は大変画期的な結果であり、すぐに特許申請を済ませ、粒子共存逐次リビングラジカル重合法により表面を高分子により改質したシリカを用いたゴム強化法が、これまでゴムの科学の中では前例のない日本発画期的ゴム(タイヤ)新技術として、産業界で採用されることを目指すことにした。この結果を踏まえ、多重散乱を用いた光学材料の研究開発は一時休止し、社会的インパクトの大きいゴム材料に関する研究に研究の重点を置くことにした。 今後は、粒子共存逐次リビングラジカル重合法による粒子コーティング技術の企業への技術移転による工業生産化ならびに、粒子共存逐次リビングラジカル重合法による機能化シリカフィラーを用いたゴムの実用化へ向けて研究開発を行う。また、高分子業界でもシビアなゴムの加工工程に、粒子共存逐次リビングラジカル重合法による機能化フィラーが耐えうることを示せたことで、より多くの種類の高分子樹脂用フィラーとして利用できる可能性が高まった。そのため、引き続きの粒子共存逐次リビングラジカル重合法の確立と(ゴム以外への)応用展開の研究も進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していたフォトニック材料とは違う方向での研究の大きな広がりが出てきた。多くの高分子系材料に適用可能な粒子共存逐次リビングラジカル重合法の開発が、ここまでの拡がりを見せている要因である。代替不可能なゴム材料の性能向上を達成し、実用化を目指すことと、更なる応用分野を模索することとで(どちらも特許出願済)、当初の目的の範囲を大幅に上回る成果になってきていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、光学材料への応用をはるかに凌駕する高インパクトな応用領域(ゴム)で良い成果を出せたことにより、ゴム材料の力学特性向上に集中して研究を行うこととする。ゴム材料はいわば、無機物では代用の絶対に効かない高分子材料の絶対的優位の揺るがない数少ない分野であり、この分野における研究の進歩の重要性が言うまでもない。また高分子の世界において、ゴムに使えるという事は、他の高分子材料へのフィラーとしても十分に応用可能であるという事を示唆するものであるので、粒子共存逐次リビングラジカル重合法の幅広い適用範囲と高い生産効率とを活かし、更に多様な用途での高分子材料の性能向上に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、研究の方向性をゴム材料の力学特性向上に移すという変更により、当初計画していた分光システムを導入する必要が無くなった。ゴム材料の力学特性向上へ向け、高分子表面機能化ナノフィラーの分析装置を購入した。予算が次年度に繰り越しになった理由は、次年度以降の企業への粒子共存逐次リビングラジカル重合法の技術移転活動や、ゴム材料以外の高機能フィラーの利用の研究に適した機材を購入するために、必要と判断したためである。 以上の理由に合わせ繰り越した研究費は、次年度に企業への粒子共存逐次リビングラジカル重合法の技術移転活動や、ゴム材料以外の高機能フィラーの利用の研究に適した材料、機材購入に充てる。
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