研究概要 |
本研究では、主に高垂直磁気異方性を有する磁性体薄膜の示す数百ギガヘルツ以上のコヒーレント磁化才差ダイナミクスを超短パルスレーザーを用いて研究する.具体的には,(1)1テラヘルツ以上のコヒーレント磁化才差ダイナミクスを実用合金薄膜において観測し,(2)磁化才差ダイナミクスの励起プロセスにかかわる現象論的理論を構築することを主たる目的とする.最終的には,テラヘルツ領域における磁化ダイナミクスを開拓するとともに,テラヘルツ波応用への知見を得る. 平成24年度は、主として高垂直磁気異方性を有するMn-X-Y系磁性材料薄膜における磁気モーメントの才差周波数について調べた.高K_U・低M_S材料では才差運動の周波数が大きくなることが分かっており,XY元素組成を系統的に変えた薄膜材料を探索した.要するに,次のことが分かった. (1)X=Al,Y=Geにおいて,二次元的な層状構造と5Merg/cc以上の高垂直磁気異方性を示し,かつ300emu/ccという低飽和磁化のMn-Al-Ge合金薄膜を作製し,磁化ダイナミクスを計測することに成功した.磁化才差周波数は100GHz程度と小さいものの,二次元性に起因する新しいレーザー励起磁化ダイナミクスが生じている可能性がある. (2)Mn:Geが3:1付近の組成で,低飽和磁化(100emu/cc程度),高磁気異方性(3Merg/cc程度)の垂直磁化薄膜を作製することに成功した.磁化才差ダイナミクスを超短パルスレーザーで計測しているが,保磁力が2T程度あるため計測が困難であった.既存光学系の改良を行うことで測定感度を改善し次年度に評価を行う. (3)低飽和磁化・高磁気異方性のMn-Ga合金とCoの積層膜の界面に負の交換相互作用が現れることを発見した.この人工フェリ磁性体では,負の界面交換相互作用のため高速磁化才差運動を生じる可能性がある(オプティカルモード).
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