研究課題/領域番号 |
24686003
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 准教授 (40367735)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | GaN / LED / Moth-eye構造 / トンネル接合 / 貼り合わせ / ブロードスペクトル / ナノ金属 / アンチモン |
研究概要 |
本研究課題では、演色指数が90以上で効率が300 lm/W以上という『太陽光スペクトルに近い究極的な照明用・蛍光体フリー・白色LED』の実現を目指す。具体的には発光強度を高めると同時にブロード発光を実現するための手法の開拓、Moth-eye構造や多層膜反射鏡技術などの『光制御技術』および『光/電子透過型・貼り合わせ技術』を活用する。本研究課題は、複数のドナー・アクセプタ不純物の添加、格子の異なる原子(Sb、B等)の添加、量子効果・表面(界面)準位・ナノ金属の活用などこれまで報告例のない新しい手法を適用することにより窒化物半導体の学問分野に新しい潮流を構築すること、さらには現状技術の理論限界を打破することが特色である。平成25年度の研究課題では以下のような検討を進めた ① Moth-eye構造の検討・・・LEDの光取り出し及び配光特性を改善するために、基板にサブミクロンオーダーの凹凸を形成する構造を検討した。結晶成長によって発生するボイドを抑制することによって回折効果の発現が得られることが分かり、ミクロンオーダーの凹凸を形成する場合に比べて有用であることが分かった ② 多層膜反射鏡作製技術・・・ 誘電体を多層に積層することによって任意の波長で95%を超える反射率を実現できる構造を実現した ③ 光/電子透過型・貼り合わせ技術・・・ 結晶成長によるトンネル効果を利用したデバイス、もう1つは貼り合わせ技術を活用した構造の2つの検討を行い有用であることを明らかにした。特にトンネル効果のデバイスでは2波長で発光するLEDを実現した。 ④ 格子の異なる原子(Sb、B等)の添加、量子効果・表面(界面)準位・ナノ金属の活用・・・アンチモンの添加、さらにはナノサイズの銀粒子を用いたLEDの検討を行った。 上記のように、平成25年度は要素技術を固めほぼ目標を実現した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、『太陽光スペクトルに近い究極的な照明用・蛍光体フリー・白色LED』の実現を目指し研究を進めている。この研究を実施するためには、光と電子を同時に制御することが必要不可欠であり、そのために本研究課題では光制御技術』および『光/電子透過型・貼り合わせ技術』さらには複数のドナー・アクセプタ不純物の添加、格子の異なる原子(Sb、B等)の添加、量子効果・表面(界面)準位・ナノ金属の活用を開発し、そのデバイス応用を目指し研究を進めている。 これまでの検討で研究の概要にまとめたように ①Moth-eye構造の検討 ②多層膜反射鏡作製技術 ③ 光/電子透過型・貼り合わせ技術 ④ 格子の異なる原子(Sb、B等)の添加、量子効果・表面(界面)準位・ナノ金属の活用を検討し特にトンネル接合を用いたデバイスにおいては緑色と青色LEDを複数積層し多波長発光を実現している。これらのことから最終的に目標としている構造を実現するめどは立ったと言える。また、ナノ金属を用いることによって、プラズモン効果による緑色LEDの内部量子効率改善効果が確認できたことから、本手法の有用性は明らかになってきておりさらなる改善を今後検討する予定である。また貼り合わせ技術においては、デバイス応用は未実現であるが、既に実績のあるITOでの貼り合わせが可能であることを実証しており、今後このデバイス応用をどのように行うかが課題となると考えられる。さらに、アンチモン添加や多層膜反射鏡など多数の検討を行うことができた。 以上のことから現在までの研究の達成度としては、上記のとおり(2)おおむね順調に進展していると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
上記に示したように平成25年度まですすめた研究課題をさらに推進する。特に、ナノ金属によるLEDの内部量子効率の改善においては顕著な成果を見ることができたため、平成26年度は同効果の検証を徹底的に行う。その一方でブロード発光を実現する手法に関してはIn組成の不均一を利用することなどは検討できたが、効率の改善に至っていないため、平成26年度はその問題点を徹底的に検証する。また、現状は結晶成長によって実現したトンネル効果を活用した多波長LEDを実現したが、同手法では緑と青領域までカバー可能だと考えられるが赤色領域が不十分であるため、平成25年度に検討した貼り合わせ技術をさらに発展させデバイスプロセスに入れることを検討する。 これらの検討を行った後にブロード発光層を用いたLEDの試作を行う。本研究では、ブロード発光する発光層を用いるため、従来のLEDとは最適なデバイス構造が異なると考えられる。そこで、シュレディンガー方程式・ポアソン方程式・電流連続の式をセルフコンシステントに解くことが可能なSiLENSeやTCADなどのデバイスシミュレーター(現有)を活用することによって最適な層構造を設計する。さらに本グループの独自技術である正孔濃度が1019[cm-3]を超えるp型GaInNを適用し、最適なデバイス構造の検討を進める。そして、最終的に、照明用・蛍光体フリー・白色LEDの試作を行う。作製したLEDの光出力・演色性等を評価を進め、理想的な白色LEDの実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、デバイス作製に必要な物品を物品費として算出していたが、納入業者から納入時に大量購入することによって物品費を削減できることが分かったため当初の予定よりも物品費が大幅に削減できた。また、平成26年度に実施する研究課題の内容で多数の消耗品(主に半導体原料および基板)が発生することが予想されたため、平成25年度の予算執行を抑制した。 また、旅費が減ったのは平成26年度にIWNおよびMRSという権威ある国際会議が予定されており、そちらで成果を公表しようと考えているため、平成25年度は支出を抑制した。 平成26年度に実施する研究内容は物品費として基板を多数購入する予定である。これは高性能デバイスに必要不可欠であると考えたためである。また、IWNとMRSという権威ある国際会議での発表を予定しており、その分の旅費への支出を予定している。
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