研究課題/領域番号 |
24686004
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 日本電信電話株式会社MTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
眞田 治樹 日本電信電話株式会社MTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 研究主任 (50417094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スピン / 電子スピン共鳴 / スピン軌道相互作用 / 表面弾性波 |
研究概要 |
本研究の目的は、半導体量子井戸と表面弾性波の性質を融合した「ダイナミック量子ドット」を実現し、スピン物性の解明と新しいスピン制御法の実現を通じて、スピン量子情報伝送手段としての基盤技術を開拓することである。 平成24年度は、GaAs/AlGaAs量子井戸に表面弾性波を伝搬させることで実現する「ダイナミックドット」を用いた電子スピンのパケット輸送に関する実験に取り組んだ。試料は、表面弾性波が量子井戸内につくるピエゾ電界の一部を金属薄膜によって遮蔽して実現する「導波路型」のダイナミックドットを作製した。このダイナミックドットを用いると、金属薄膜に開けたスリットに沿ってドットが移動するため、電子の輸送経路を自由に制御できることが確認できた。この技術を利用して電子を正弦波状に蛇行運動させ、Kerr顕微測定によって輸送中のスピンのイメージングを行った。蛇行運動する電子は、スピン軌道相互作用が原因で、二種類の有効磁場(静磁場と振動磁場)を同時に感じる。 その結果、一般的な電子スピン共鳴によるRabi振動と等価な現象が誘起されることが分かった。さらに、蛇行チャネルに対するスピンの注入位置を変化させると、その位相関係に依存してRabi振動の振る舞いが変化することから、任意のスピン方向に操作できる技術であることも確認できた。従来提案されていた実磁場を用いた電子スピン共鳴によるスピン操作では、磁場発生に伴うエネルギーの大部分が無駄になってしまうことが問題であった。本現象を用いると、シンプルな素子構造で効率的にスピンに乗せた量子情報を操作することが可能となるため、量子コンピュータの新しい要素技術として応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ダイナミックドットによるスピンパケット輸送に関するデータを取得でき、輸送中の無磁場電子スピン共鳴の実証にも成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、輸送中のスピン緩和制御・および量子化準位の光検出を目的とした実験を進める。
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