研究概要 |
研究代表者が最近開発した超高感度THz近接場顕微鏡は,常温物質のミクロな熱揺らぎに伴う極微弱THz波(波長:12~16Fm)を,ナノスケールの超高分解能で検出できる.本研究の目的は,THz波発生のエネルギー源としてトンネル電流を新たに注入することで,物質研究展開へ向けて大きな飛躍を図ることにある.具体的には,THz近接場顕微鏡にSTMと分光機能を付加し,THz波の「発光・検出・分光」を通して物質・生体系の微視的現象に迫る新計測手法を構築する. 平成24年度においては,THz近接場顕微鏡のAFMを粗動,トンネル電流制御を微動として利用することで高速の探針位置決めを実現し,常温常圧STMの試作機を構築した.本STMを利用して金属や誘電体表面におけるSTM発光検出を試みたが,S/Nが非常に小さく,STM発光と考えられる光がわずかに検出されるものの,再現性の高いデータを得るのが困難であった.そこでS/Nを大幅に向上させるために低温STMへの検出器CSIP導入を試み,現在設計を行っている. また将来的な分光計測へ向けて,異なる波長のCSIPのラインナップをそろえることにも注力し,平成24年度は12,15,17脚のCSIPを作製することに成功した.また検出構造を改良することによって,より長い波長(45μm)のCSIP作製にも成功し,将来的な分光計測へ向けて大きく展望を開いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた常温常圧STMの開発は予定通り達成したものの,STM発光検出には未だ成功していない.そのため方針を微修正し,S/Nを上げるために現在低温STM内に検出器CSIPを導入する装置を設計中である.しかし異波長検出器のラインナップをそろえる件については,平成25年度以降の目標としていたが,平成24年度の時点でかなり進めることができた.以上から自己評価を(2)としている.
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今後の研究の推進方策 |
確実にSTM発光検出を行うために,S/Nを上げるのが困難な常温STMではなく,低温STMに検出器を組み込んで発光検出実験を行う予定である.低温STMでTHz発光検出を行ったのちにそのノウハウを常温STMに活かし,最終的に常温のSTM発光にトライする予定である.検出器開発については,異波長CSIPのラインナップがそろってきているので〓広帯域CSIPの開発にも挑戦する.
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