研究代表者が最近開発した超高感度のTHz近接場顕微鏡は,常温物質のミクロな熱揺らぎにともなう極微弱THz波(波長: 12~16 μm)を,nmスケールの超高分解能で検出することにができる.ただしこの手法は,信号源を熱輻射に頼る点が物質研究展開への1つの制約となっている.そこで本研究では,THz波発生のエネルギー源としてSTMによってトンネル電流を注入することで,物質研究展開へ向けて大きな飛躍を図っている.具体的には,THz近接場顕微鏡にSTMと分光機能を付加し,THz波の「発光・検出・分光」を通して物質・生体系の微視的現象に迫る新計測手法を構築することを目標とした. 前年度において常温の簡易STMを構築し,STM発光の検出を試みたところ,金属とタングステン探針間において近接場信号の増強が確認された.しかしS/Nが低く,明快な解析が困難なため,平成26年度は構築STMの低温化を試み,低温チャンバにSNOM/STM機構を組み込んだ低温THz近接場顕微鏡を設計した.具体的には,4.2Kの低温真空チャンバ内に検出器CSIP,測定試料,および観察光学系すべてをアセンブルした装置を設計している. 分光へ向けては,前年度開発した2色CSIP検出器の量子効率向上へ向けて,金ナノギャップをアンテナとして導入したCSIPを開発し,量子効率の大幅な向上(8%から16%へ)に成功した. 本設計を元に,今後は低温SNOM/STMを開発し,STM発光分光を試みる予定である.
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