研究課題
若手研究(A)
ランダムな数列を生成する乱数生成器は、情報セキュリティ分野や自然災害予測のための大規模数値シミュレーション分野に必要不可欠な基盤技術である。しかしながらコンピュータで生成される擬似乱数を用いた場合、安全性の脅威や予測精度の低下が近年大きな問題となっている。そこで本研究では、レーザの高速性とカオスの不規則性を利用した超高速物理乱数生成器の開発を行い、実用化へ向けた高速化および小型化を達成することを目的とする。特に世界最速となる1秒間に1兆個(毎秒1テラビット)の生成速度を有する超高速物理乱数生成器の開発と、光集積回路および後処理用電子回路を実装した超高速物理乱数生成用ボードの開発を行う。半導体レーザにて発生するカオスを用いることで物理乱数生成の実証実験を行った。本手法では半導体レーザに戻り光を加えてカオスを発生させ、これを光検出器にて検出・増幅し、電気信号へと変換した。さらに電子回路によりアナログ-デジタル変換を行い0または1へと変換し、論理演算を行って2値乱数列を実験的に生成した。生成された乱数は国際標準の統計検定に全て合格し、ランダム性の高い乱数であることが明らかとなった。さらに生成速度を向上させるために、取得された時間波形から乱数を生成する際の後処理方式の開発を行った。一つのサンプリング点から複数のビットを抽出するマルチビット生成方式を適用し、後処理としてビット反転処理を実現した。さらに複数のレーザカオス光源を用いて並列化し、時間遅延信号と組み合わせることで高速な乱数生成を実現した。また半導体レーザから受光素子までを一体化した乱数生成用光集積回路の設計を行った。カオス発生用の外部共振器と光増幅器を備えた半導体レーザ光集積回路の設計および数値計算による最適パラメータ値の調査を行った。a
2: おおむね順調に進展している
一年目に達成予定であった物理乱数生成実験の実現および高速化への後処理方式の開発は順調に達成されている。さらに光集積回路を用いた小型化の設計も順調に進んでいる。
本研究課題は順調に遂行されており、今後も計画通り行う予定である。特に来年度の課題としては、高速化のための帯域拡大技術の開発と、小型化のための光集積回路の作製が挙げられる。高速化に関しては、カオス生成用レーザと帯域拡大用レーザを準備し、帯域拡大用レーザの光出力をカオス発生用レーザへと注入することでカオスの周波数帯域拡大を達成する。また小型化に関しては、半導体レーザから受光素子までを一体化した乱数生成用光集積回路の設計および実装を行い、光集積回路におけるレーザカオスの時間ダイナミクスの調査を行う予定である.
次年度は光集積回路の実装およびその計測機器の購入のために助成金を使用する予定である。さらに高速信号検出機器の購入にも充てる予定である。直接経費次年度使用額が60万円となっているが、これは本年度購入したビームプロファイラや光パワーメータが予定よりも安く購入できたために生じている。本助成金は次年度の助成金と合わせて、光検出器等の購入に充てる予定である。
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