研究課題/領域番号 |
24686010
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
内田 淳史 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50327996)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 乱数 / 応用光学・量子光工学 / 先端機能デバイス / セキュア・ネットワーク / 情報通信工学 |
研究概要 |
ランダムな数列を生成する乱数生成器は、情報セキュリティ分野や自然災害予測のための大規模数値シミュレーション分野に必要不可欠な基盤技術である。しかしながらコンピュータで生成される擬似乱数を用いた場合、安全性の脅威や予測精度の低下が近年大きな問題となっている。そこで本研究では、レーザの高速性とカオスの不規則性を利用した超高速物理乱数生成器の開発を行い、実用化へ向けた高速化および小型化を達成することを目的とする。特に世界最速となる1秒間に1兆個(毎秒1テラビット)の生成速度を有する超高速物理乱数生成器の開発と、光集積回路および後処理用電子回路を実装した超高速物理乱数生成用ボードの開発を行う。 本年度は、半導体レーザにて発生するカオスを用いた物理乱数生成および高速化のための後処理方式の開発を行った。カオス波形とその時間遅延波形をマルチビットサンプリングし、8ビットデジタル信号へと変換する。一方のビット列に対して上位ビットを下位ビットへと置換するビット順反転処理を行い、これと元のビット列との排他的論理和演算を行うことで、高品質な乱数の生成に成功した。さらに2値乱数列の1の出現頻度を調査したところ、上位ビットと下位ビットに出現頻度の偏りが発生していることを発見した。本後処理方式により出現頻度の偏りを低減させることが可能となり、レーザカオス波形に対する本手法の有効性を示した。 さらに乱数生成用光集積回路における非線形ダイナミクスの実験的調査と物理乱数生成実験を行った。半導体レーザの注入電流および戻り光強度を変化させると、周期振動や準周期振動、さらにはカオスが観測された。また低周波不規則振動や間欠性状態も観測された。このカオス振動を用いて乱数生成を行ったところ、国際標準の乱数統計検定に合格する乱数の作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は当初計画通り順調に進展している。乱数の高速化に関しては後処理方式の開発に成功しており、今後は高速化の実証実験を行う予定である。また乱数生成器の小型化に関しても、光集積回路を用いた乱数生成実験に既に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、乱数生成速度の高速化のためのレーザカオスの帯域拡大実験を行う予定である。複数のレーザを組み合わせることで、カオスの帯域を向上させることが可能である。本実験に乱数生成用後処理を組み合わせることで、乱数生成の高速化が実現可能となる。さらに光集積回路を用いた乱数生成実験を継続して行う予定である。また、複数の半導体レーザを搭載した光集積回路における非線形ダイナミクスの調査や乱数生成実験も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度購入予定であった帯域拡大実験に関する計測機器および光学機器の購入を、次年度へ変更したためである。また本年度補助金にて購入した電気信号増幅器が予定よりも安価であったためである。 次年度には補助金と助成金を合わせて、帯域拡大実験に関する計測機器の購入を予定している。また当初計画通り、光学部品の購入も計画している。
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