研究課題
本研究の目的は圧電結晶の活性表面を用いた弾性表面波の超長距離伝搬を用いた高感度極性ガスセンサを開発することである。極性ガスとして水分子を対象とした場合に、前年度までの研究により、水晶の加工変質層が有用であることを見出し、非晶質シリカの効果であることをゾルゲル法で合成したシリカ膜(ゾルゲルシリカ膜)により検証した。その結果、0.2 nmol/mol(ppb)の検出限界を持つ微量水分センサとして利用できる可能性が示された。この性能は微量水分測定器の分野で最も高感度なキャビティリングダウン分光装置(CRDS)と同等であり、さらに応答時間に関してはその1/10と著しく短かった。しかし実用化を見据えた場合に、センサ出力の長期にわたる安定性(ドリフト、感度の経時変化の除去)が重要であるが、高調波素子を用いた温度変動によるセンサ出力の除去(温度補償)はまだ完全ではなかった。そこでH26年度には測定機器の回路定数の温度依存性の除去を目指して、従来の周波数差分に異なる周回波間での遅延時間の差分を組み合わせた「周波数周回差分」を考案して適用した。その結果、計測器に起因した出力の変動は見られなくなり、極性分子と活性表面の相互作用のみを精密に評価できる基盤が整った。一方で、ゾルゲルシリカ膜を用いたセンサの出力はやはりドリフトしていたことが明らかになったため、原因が膜に吸着した様々な有機分子の脱離にあると考えセンサのベーキングを実施した。その結果、130℃の乾燥窒素中で十分な時間処理するとドリフトを著しく低減できることが分かった。このようにボールSAW微量水分センサを実現できる見込みが得られたため、アンダーサンプリングを用いた測定装置の簡略化も試みた。アンダーサンプリング時の応答の定式化した結果、信号対雑音比は60%程度に下がるものの十分実用的な出力が得られることが分かった。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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