研究課題/領域番号 |
24686014
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
中野 貴之 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00435827)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中性子検出 / 結晶成長 / III族窒化物 / MOVPE |
研究概要 |
放射線検出器の開発として、中性子検出半導体材料の実現をIII族窒化物半導体に中性子捕獲元素であるBやGdを混晶化させることで、空乏層中において中性子捕獲時に電荷を発生させる方法にて実現を目指している。GaN中にB原子やGd原子を混晶させて結晶成長させるために、それぞれの結晶成長技術の開発を行った。BGaNの結晶成長では低圧成長かつ歪補償層を作製することで高品質化を実現しており、B組成1%のショットキーダイオード特性を得られる結晶成長を実現した。作製したショットキーダイオードにより放射線検出特性の評価を実施するに至った。GdGaNの結晶成長においてはGd有機金属材料の飽和蒸気圧の低さから高温供給が必要であり、高温供給ラインの導入および高温供給ラインを用いたGaN、GdGaNの試作を行った。高温供給ラインがGaNの結晶成長に影響を及ぼすことを明らかにしており、条件の最適化によりGd原料80℃での高温供給を実現している。特にBGaNにおいては放射線検出特性を評価するにいたっており、各放射線(α線およびγ線)に対する検出感度を明らかにした。中性子検出時においてα線のみに感度を有することが必要であるため、詳細に評価を行ったところ、ショットキーデバイスでの空乏層厚さでは、γ線に対する検出感度はなくα線のみに感度を有することが確認できた。また、α線に関する検出感度はバンドギャップから想定される理論値と大きな違いはないことが確認できた。 更に、中性子線照射においても、中性子捕獲時に発生するα線を捕獲することで中性子検出を実現しており、中性子捕獲半導体材料として十分に機能する材料であることを示している。今後の研究により、BおよびGdを含んだBGaNおよびGdGaNの結晶成長技術を更に開発することで中性子検出半導体デバイスの実用化に向けた開発が進むと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
GdGaNの高温供給システムの実現を達成しており、当初計画と同等の結果を得ている。更にBGaNにおいては結晶成長技術の開発が十分に進んでおり、ショットキーダイオードの作製を行えるまで至っている。作製したBGaNショットキーダイオードにより中性子検出も実現しており、更なる結晶成長技術の開発により実用化に向けたデバイス開発への展開が期待できる成果を得ており十分な進捗であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては、主にBGaNとGdGaNの結晶成長技術を開発するために、BGaNおよびGdGaNの結晶成長メカニズムの解明を行う。結晶成長中における各原子の表面吸着状態を解析することで、GaNとは異なった結晶成長状態である各成長メカニズムを解析し、高濃度高結晶性の結晶成長技術の開発を行う。また、結合ボンドによる表面状態の変化などが考えられるため、結晶面方位の違いによる変化などを明らかにして、BGaNおよびGdGaNの結晶成長メカニズムを明らかにしていく。来年度以降に繋がる知見を得ることで来年度において中性子検出デバイスの実現を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度におけるGd高温供給ラインの発注において現地での作業などを教員および学生で行ったことにより、作業費がカットされたことと消耗品の購入を抑制したため次年度使用額が生じた。この経費に関しては今年度および来年度における消耗品費にあてており、円滑に研究を進められる予定である。 今年度来年度における消耗品購入にあてており、成果がでているためサンプル作製が十分に行えるように材料費および原料費にあてている。
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