研究課題/領域番号 |
24686018
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澄川 貴志 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80403989)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ要素 / 薄膜 / 金属 / 動的斜め蒸着法 / 力学特性 / 疲労 / 破壊 |
研究概要 |
動的斜め蒸着法を用いて作製したらせん型ナノ要素単体に対する試験手法を開発した。試験は透過型電子顕微鏡内で実施し、円錐型のダイヤモンド圧子を用いてナノ要素に負荷を行う。このとき、基板上のナノ要素の要素間隔が狭いと圧子が他の要素に接触し、単体のナノ要素の力学特性を取得することができない。そこで、形状を保ったまま要素間隔を拡大できる手法を開発した。さらに電子顕微鏡での透過観察が可能な試験片形状とその加工方法を考案し、単体のナノ要素が変形する際の荷重-変位関係およびその変形挙動に関するその場観察の取得に成功した。単体のナノ要素は、マクロ材とは大きく異なる力学特性を示すことを明らかにした。 前年度開発・作製した蒸着装置を用いて金属らせん型ナノ要素配列薄膜を作製し、カンチレバー式負荷試験手法を用いて一方向負荷試験および繰り返し負荷試験を行った。一方向負荷試験によって、ナノ要素集合薄膜は、マクロ材では達成不可能な許容ひずみ量(破断までに許容するひずみ量)を有することを明らかにした。繰り返し変形試験によってS-N曲線を取得した結果、as-depoでのナノ要素集合薄膜は疲労現象を示さないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、ナノ要素単体への負荷実験およびナノ要素集合薄膜への一方向負荷試験と繰り返し変形試験を実施した。ナノ要素単体に対する負荷試験では、その場観察を行いながら荷重ー変位曲線を取得することに成功し、マクロ材とは大きく異なるナノ要素特有の変形特性を明らかにした。また、疲労試験では、as-depo状態のナノ要素集合薄膜は、疲労破壊しないことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
(1)熱処理後の機械特性評価 金属ナノ要素配列薄膜に対して熱処理を行う。熱処理はナノ要素の内部構造に影響を及ぼすため、塑性挙動は大きく変化すると予想している。微小負荷試験を用いて、熱処理後のナノ要素の機械特性を評価する。さらに、金属ナノ要素配列薄膜の機械特性が熱処理前(塑性変形能が変化する前)と比べてどのように変化するかを検証する。 (2)薄膜の新奇力学特性発現メカニズムの解明 実験で取得したナノ要素単体の機械特性を基に、FEM解析を援用し、形態制御金属ナノ要素配列薄膜が有する機械特性及びそのメカニズムについて検討を実施し、解明を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、一方向負荷試験および疲労変形試験に用いる顕微鏡システムの購入予定であったが、試験時の振動が想定よりも小さいことが判明し、当初仕様に組み込んでいた一部の装置(高精度除振台)を除外したたため。 当初予定であった金属ナノ要素集合薄膜の作製に成功したことから、さらに化合物でのナノ要素集合薄膜作製を試みる。そこで、本研究で開発した低温制御動的斜め蒸着装置に対して、化合物での蒸着を実施できるスパッタガンを購入し、装着する。
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