最終年度である平成26年度では,前年度に購入したその場観察摩擦試験機にこれまで本研究で構築したその場撮影システムを組み合わせて実験を行った.そして,前年度に測定した焼付き中に発生する塑性流動の流動速度の計測を行った.実験パラメータについては,すべり速度を変化させた.その結果,焼付き中に発生する塑性流動の流動速度はサファイアディスクの速度よりも一桁以上小さいことが明らかとなり,塑性流動時において,すべり面は表面内部ではなく,ディスクとの界面ですべりが生じていることがわかった.このことから,塑性流動中の発熱は界面での発熱が主となり,今後期待される焼付きモデル構築にあたって重要な知見を得ることができた.また,今年度は別途近赤外線を検知できるカメラも使用して塑性流動部の温度の測定を行ったが,塑性流動部では800度を超える高い温度上昇が生じていることが明らかとなった.さらに,異物混入の影響を調べるために,酸化鉄を潤滑油中に混入させた際の実験も行った.その結果,酸化鉄が表面同士の凝着を抑制し,塑性流動を抑えているようすがその場観察の結果明らかとなった. 年度の後半では,実験後の焼付き表面の分析を行った.レーザ顕微鏡によって表面形状を調べた結果,焼付き後の摩擦面は塑性流動の結果,平坦な面となっており,硬さが大きく変化していることがわかった.そして,平坦部にあるスクラッチ痕は摩耗粉の大きさとほぼ同等なものであることが明らかとなった.
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