研究課題/領域番号 |
24686023
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊賀 由佳 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (50375119)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キャビテーション / 熱力学的効果 / 高温水 / タンネル / LDV / サーミスタ |
研究概要 |
研究課題2年目の平成25年度は,初年度に建設された高温高圧水キャビテーションタンネル実験設備の修正と,基本性能実験,温度計測技術の構築を行った.修正項目としては,測定部床およびタンネル計測部の水平出し,循環ポンプ封水冷却ラインの改良,圧力自動調節バルブの改良,流量調整インバータのデジタル化,等々である.封水冷却ラインについては,タンネルループ内圧力が室温運転時には低圧,高温運転時には高圧となり,圧力の作動範囲が大きく異なるため,循環ポンプを通して,封水冷却ループからメインループへ,またはその逆の水漏れが大きいことにより,高温時の運転に危険があった.そのため,封水ラインを自己注水冷却へと変更した.また,タンネルの基本性能として,タンネルの固有振動を加速度器で計測し,測定部の流量‐流速特性と,測定部流速の鉛直方向速度分布をLDVで計測した.また,温度計測に関しては,サーミスタ(Nikkiso-Thermo Co., Ltd.)を用いた計測技術を検討した.サーミスタは外径2 mm 厚さ0.5 mm のSUS304パイプ内に挿入して温度計測プローブとし,試験部側壁よりプローブ先端がスパン中央になるよう挿入し,温度計測を行う.全てのサーミスタは水晶温度計を用い校正する.サーミスタの電気抵抗をデジタルマルチメータを用いて計測し,温度計測の不確かさは0.02 Kと見積もられた.また,試験部側壁からの熱伝導の影響を考慮するため定常伝熱解析を行い,プローブが定常的に水蒸気に覆われている場合で,実測値と実際の温度との差が10%以下であった.また,時定数は5.42 s であり,実験データとしては20 sec 間の時間平均を用いることとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験設備は本年度の改良を経て概ね完成し,キャビテーションを発生できるようになった.また温度計測技術も構築されたため,来年度に実際に熱力学的効果の解明に向けた計測を行えると考えている.しかし,熱力学的効果の顕在化すると考えられる100度以上の高温水の実験を行うためには,操作盤を実験設備から離し,遠隔操作でタンネルを運転するように改造する必要がある.本研究課題で最も実行したかった140度でのキャビテーション実験を研究課題が終了する来年度中に実現するために,改造工事を急ぐ必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,140度での実験を実現するために,操作盤を離し,遠隔でタンネルが運転できるように改造工事を行う.また,並行して,計測した温度の評価法として,クラウドキャビテーションの様に,水と蒸気が周期的にプローブを通過するような場合に関して,キャビテーションの振動周期と時定数を考慮してどの様に正確な時間平均を評価するかについて検討する.また,高速度カメラを用いた可視化結果から,キャビティ体積やキャビティ長さを評価する手法についても検討する.得られたキャビティ内部温度とキャビティ体積の情報を用い,キャビティ内部の温度降下量と主流の温度,流速,乱れ,キャビティの非定常性との関係について考察し,キャビテーションの熱力学的効果の支配因子を特定するなど,現象解明を試みる.さらに,次年度は研究課題が終了するため,研究成果を取りまとめ,国際・国内学会での発表と,学術雑誌への投稿を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
高温実験の安全性確保のため,実験設備の操作盤等を移動し,遠隔で運転可能になるように改良工事をする必要があるため,予算を次年度へ残した. 実験設備を設置した実験室に,実験設備と離してコントロールルームを建設中であり, その工事が終わり次第,操作盤を移動する工事を行う予定である.計測部には監視カメラを設置し,コントロールルーム内のモニタで監視できるようにする.また,温度計測や高速度カメラを遠隔で操作できるようにケーブルを延長する.次年度使用額は今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成26年度の請求額と合わせて上記の研究遂行のため使用する予定である.
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