研究課題/領域番号 |
24686024
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
嘉副 裕 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (20600919)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 流体 / 流体工学 |
研究概要 |
本研究では、従来の流体工学に化学の手法を融合させて、ナノ空間の流動解明に向けて光の回折限界を超える新たな超高空間分解能流動計測法を創出することを目的とする。具体的には、ナノ空間のイオン分布や表面の界面化学的な要素を制御し、ナノトレーサの機能を最適化してエバネッセント光を用いた計測法を開発し、ナノ流路内の圧力駆動流の計測を行う。平成24年度は、10nmオーダのトレーサ粒子とエバネッセント光を用いたナノ粒子画像流速計(PIV)の開発を行うとともに、次年度以降に向けた基礎検討を行った。20-60nmの蛍光ナノ粒子とエバネッセント光を用いた計測システムを開発し、400nmのナノ流路における速度分布計測に初めて成功した。 粒子径が10nmオーダになるとシグナル強度の低下および増大したブラウン運動による計測の誤差が顕著となる。そこで、連続光レーザと高感度EMCCDを制御して100μsオーダの時間分解能を実現し、更に多時刻粒子追跡による全粒子検出アルゴリズムを開発することでこれらの問題を解決した。更に、ナノ流路へのトレーサ粒子の導入についても、ナノ流路の加工プロセスの影響や壁面近傍イオン分布によって導入される粒子数が異なることが判ってきた。これらの結果、粒子位置検出誤差60nmという超解像の分解能を達成し、400nm流路の圧力駆動流において、親水性のガラス壁面にもかかわらずすべり速度を示唆する流動計測結果が得られた。これは、単一分子群から連続体への遷移領域であるナノ空間の流体の特異性が顕在化した可能性を示唆している。 一方で、粒子径や粒子表面の化学的性質、更には露光時間や時間分解能といった計測条件が結果に及ぼす影響が明らかになりつつある。そこで、今後はこれらを最適化して計測法そのものによる誤差を特定し、ナノ流路内の正確な流速分布の把握に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では平成24年度にナノ空間の流動計測に向けた流速計の開発を行い、流動解明に向けた課題を抽出することを目的とした。それに対して、実際に計測法を構築してナノ流路における初期的な計測結果を得るに至っており、特異な流動を示唆する結果が得られるとともに、計測法の課題も明らかになってきており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、平成24年度に明らかにした計測法の課題に対して解決方策を練り、計測法の確立に取り組む。平成25年度を計測法の課題の抽出、平成26年度を計測法の確立と位置付ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は主にナノ流路におけるナノ粒子挙動の解明とそれを踏まえた計測法の最適化を主な課題とする。従って、研究における経費の使用としてはこれらの検討のためのトレーサ粒子、光学部品、ナノ流路材質の石英基板や試薬といった消耗品がおもな用途となる。一方で、平成24年度に確立された計測法と流動計測の発表成果の発信の場として、もしくは当分野の動向調査として、年3~4回の国内外の学会への参加のための旅費を計上している。
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