研究課題/領域番号 |
24686027
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
渡部 弘達 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40551825)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | O2/CO2燃焼 / 石炭 / 二酸化炭素 / クリーンコールテクノロジー |
研究実績の概要 |
今年度は,まず,CH4/トルエンの平面火炎とPAH(多環芳香族炭化水素)生成を考慮した詳細反応解析を用いて,空気燃焼とO2/CO2燃焼におけるPAHの生成挙動について検討を行い,PAH生成の詳細な反応パスを明らかにした.PAH生成を考慮した詳細反応解析では,C2H2付加によりPAHが成長するモデルを使用した.O2/CO2燃焼では,空気燃焼と比較して未燃炭化水素の生成比率が1/10程度以下と大幅に低減し,C2H2生成が抑制されることを明らかにした.反応解析から,C2H2生成抑制は,CH3ラジカルの反応パスの変化に起因していることを示した.O2/CO2燃焼では,CO2の反応性により, OHラジカルが多量に生成するため,CH4の酸化反応が促進され,Hラジカルも多量に生成する.その結果,CH3は,H, OHラジカルと反応し,CH2,CH2Oへと変換され,2 CH3 → C2H6の反応が抑制される.C2H2は,主にC2H6を経由したパスから生成されるため,O2/CO2燃焼では,C2H2の生成が阻害されたと考えられる.また,反応解析から,O2/CO2燃焼では, C2H2の生成抑制により,PAHの成長が抑制されることを明らかにした. さらに,O2/CO2雰囲気におけるチャーのガス化メカニズムを,O2およびCO2ガス化反応の競合反応という視点から明らかにした.O2/CO2ガス化反応の場合,全ての雰囲気ガスがチャーガス化反応に関与する.したがって,チャーが十分な活性サイトをもたない場合,O2およびCO2 ガス化反応が競合するが,チャーが十分な活性サイトを持つ場合,競合反応は抑制され,O2およびCO2ガス化速度の和に近い値となる.つまり,十分な活性サイトは,競合反応を抑制し,O2/CO2ガス化速度を向上させることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,当初の計画を達成することができ,O2/CO2燃焼では,未燃炭化水素の濃度が,空気燃焼よりも大幅に低減することを明らかにし,クリーンコールテクノロジーへの展開が期待できる結果が得られた.そのため,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,より実際のプラントに近い再循環ガスに水蒸気が含まれたwet-recycleについて検討する.O2/CO2/H2O雰囲気における燃焼反応メカニズムについて検討し,CO2回収型燃焼の反応メカニズムにおける水蒸気の影響を明らかにする.また,水蒸気添加によるCO2の反応性の効果の変化についても検討する.
CO2の反応性に焦点をあてて,CO2回収型燃焼における化学反応メカニズムと物質輸送現象を解明し,より一層の高度化を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度中に,英語論文校正費用に充てる予定であったが,論文執筆過程において,追加の解析が必要になり,H27年度の投稿と予定を変更した.また,H26年度中に,海外の研究グループと反応解析に関する研究打ち合わせを行う予定であったが,H27年度の打ち合わせに変更した.このため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
英語論文校正費用と研究打ち合わせのための出張費用とする予定である.
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