昨年度までの成果において,CH4/O2/CO2燃焼では,CO2の消費反応CO2+H→CO+OH (R1)により,CO2の生成比率が負の値となることを示した.今年度は,再循環ガスに水蒸気が含まれたCO2回収型石炭燃焼を対象としたCH4/O2/CO2/H2Oの雰囲気と,反応性ガスであるH2Oを不活性ガスであるArに置換したCH4/O2/CO2/Ar雰囲気の燃焼実験および反応解析を行った. O2/CO2雰囲気と比較して,O2/CO2/H2O雰囲気では,CO2の消費量が約70%減少し,O2/CO2/Ar雰囲気では,約20%減少した.Arが不活性ガスであることを考えると,H2Oの反応性がCO2の消費反応R1を阻害していることが示されている.さらに,昨年度まで使用していたGRI-Mech 3.0に加えて,1140の素反応式と171の化学種から構成されるAramco Mech 1.3を用いた反応解析を行い,詳細反応機構について検討を行った.いずれの詳細反応機構を用いた場合においても,O2/CO2雰囲気において,もっともOHラジカル濃度が高くなっており,これは,CO2の反応性R1に起因していることが示された.O2/CO2/ArもしくはO2/CO2/H2O雰囲気の場合,O2/CO2雰囲気よりも,OHラジカル濃度は低下しており,若干ではあるが,H2O希釈の方がOHラジカル濃度が低下することが分かった.詳細反応の視点から,CO2回収型燃焼の基礎となるO2/CO2雰囲気とO2/CO2/H2O雰囲気の反応パスの差異を明らかにした.また,Aramco Mech 1.3の方が,GRI-Mech 3.0よりも,O2/CO2雰囲気の未燃炭化水素の実験結果を良好に再現できることを示した.
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