研究課題
生活空間の様々な物体に動力伝達機能を持たせ、荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、自由曲面に対応できる小型・軽量かつ高出力の動力伝達機構を実現するため、当該年度においては、まず全方向駆動歯車機構を用いた要素技術の開発を進めた。具体的には、全方向駆動歯車機構を用いて、全方向物体搬送用テーブル等を作成するため、複数台でそのテーブルを構成する要素となる駆動ユニット単体の構築を進めた。この駆動ユニットは、縦・横方向にそれぞれ2個ずつ、あるいは3個ずつの合計4~9個の組み合わせによって、ストロークが長く、搬送トレイが複数配置できる全方向物体搬送用テーブルを構成するものである。この駆動ユニットにおいては、モジュール3で樹脂製の平面版全方向駆動歯車をリニアガイドで支持した上で、直交する方向に中心回転軸を持つ2組の駆動用の平歯車により、トルクを全方向駆動歯車に伝達して平面に沿った任意の方向に推力を出すという機構を用いている。この駆動ユニットを用いた実験により、物体搬送用テーブルに必要な推力と位置決め精度を達成できることが明らかとなったため、現在は駆動ユニットを2つに増やして連結し、全方向駆動歯車により動かされる搬送トレイのストロークを伸ばし、さらに複数の搬送トレイを駆動できるような制御方式について基礎的な実験を行う準備を進めた。他には、平面版全方向駆動歯車をより小型のモジュール0.5で構成し、ロボットアーム先端のエンドエフェクタとしての平行グリッパの内側に、付加的な自由度としてそれを取り付けて、把持した任意形状の物体を上下左右にスライドさせたり、回転させたりする実験を行いつつ改良を進めた。
1: 当初の計画以上に進展している
荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、自由曲面に対応できる小型・軽量かつ高出力の動力伝達機構を実現するという方式については、全方向物体搬送用テーブルのユニット試作機のみならず、ロボットアーム先端の平行グリッパの付加的な自由度としても全方向駆動歯車装置を利用することにより、当初の予定より多くの実験によりその有効性を検証できているため。
本研究課題の今後の推進方策については、全方向物体搬送用テーブルのユニット試作機のみならず、ロボットアーム先端の平行グリッパの付加的な自由度としても実験を行い、それらの実験によって得られたデータと知見をもとに、さらに全方向駆動歯車の小型・軽量化を進め、汎用的な装置として発展させてゆく。
平成25年度は、より小型の全方向駆動歯車を作製するため、従来の歯車加工機ではなく、フォトリソグラフィによる微細加工に取り組む。そこで、様式Z-6の「直接経費次年度使用額」欄に記入した助成金を微細構造の全方向歯車の原材料購入などに充てる。これが、当該助成金が生じた状況であり、翌年度の研究費と共に、超小型全方向駆動歯車により様々な環境で作業ができる動力伝達装置の実現をさらに進めるために使用する予定である。
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日本ロボット学会誌
巻: Vol.30 No.6 ページ: 51-60
10.7210/jrsj.30.611
http://tadakuma.yz.yamagata-u.ac.jp/index.html