研究課題
生活空間の様々な物体に動力伝達機能を持たせ、荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、自由曲面に対応できる小型・軽量かつ高出力の動力伝達機構を実現するため、当該年度においては、まず全方向駆動歯車機構を用いた要素技術の開発を進めた。具体的には、全方向駆動歯車機構を用いて、全方向物体搬送用テーブル等を作成するため、複数台でそのテーブルを構成する要素となる駆動ユニット単体の構築を進めた。この駆動ユニットにおいては、モジュール3で樹脂製の平面版全方向駆動歯車をリニアガイドで支持した上で、直交する方向に中心回転軸を持つ2組の駆動用の平歯車により、トルクを全方向駆動歯車に伝達して平面に沿った任意の方向に推力を出すという機構を用いている。この駆動ユニットを用いた実験により、物体搬送用テーブルに必要な推力と位置決め精度を達成できることが明らかとなったため、現在は駆動ユニットを縦横2個ずつの合計4個に増やして連結し、複数の搬送トレイを駆動できるような制御方式について実験を行った。他には、投影面がインボリュート歯車の形状となる、受動ローラを放射状に備えた歯車機構を、3次元CADとマシニングセンタとを利用して、複数種類製作した。この歯車機構を全方向駆動歯車の入力用歯車として用いることにより、駆動用平歯車の歯が「全方向駆動歯車の歯と歯の間のスライド」を行うときの摩擦を「転がり摩擦係数」に基づくものとし、摩擦によるエネルギー損失を極限まで小さくすることにより、高い効率で動力伝達を行った。平成26年度は、この受動ローラ付き歯車の機構を全方向駆動歯車への入力用に最適化してゆき、製品化を目指す。さらに、受動ローラ付きウォームホイールとしての応用についても、実験によりその実現可能性を確認する。
1: 当初の計画以上に進展している
荷物の搬送や要介護者の移動などにおいて人を補助することを目標として、自由曲面に対応できる小型・軽量かつ高出力の動力伝達機構を実現するという方式については、全方向物体搬送用テーブルのユニット試作機のみならず、日常生活における様々なオートメーション機器の付加的な自由度としても全方向駆動歯車装置を利用することにより、当初の予定より多くの応用例についてその有効性を検証できているため。
本研究課題の今後の推進方策については、全方向物体搬送用テーブルのユニット試作機のみならず、用途に応じて入力装置の形態を最適化した汎用的な小型全方向駆動機構としても開発と実証実験を行い、それらの実験によって得られたデータと知見をもとに、さらに全方向駆動歯車の小型・軽量化を進め、有用な動力伝達装置として発展させてゆく。
平成26年度は、より汎用的で、様々なオートメーション機器のサイズや形状を大きく変化させることなく自由度を付加できる小型の全方向駆動歯車ユニットを複数種類作製するため、従来の方式の歯車加工機による製造方法だけではなく、フォトリソグラフィによる全方向駆動機構の微細加工方法の確立や、特殊なゲル素材を用いた柔軟構造に基づく全方向駆動歯車の製作方法の確立に長期的に取り組む必要が生じたため。フォトリソグラフィによる全方向駆動機構の微細加工方法や、特殊なゲル素材を用いた柔軟構造に基づく全方向駆動歯車を様々な原材料を調合して製作する方法を確立し、超小型全方向駆動歯車により様々な環境で作業ができる動力伝達装置の実現をさらに進めるために使用する予定である。
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日本ロボット学会誌
巻: Vol.32 No.4 ページ: pp.358-362