研究課題/領域番号 |
24686034
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
楊 家家 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30601588)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 質感認知 / クロスモダール / 触覚情報処理 / 視覚情報処理 / fMRI |
研究実績の概要 |
質感の情報は,視覚,触覚,聴覚など個々の感覚によって得られると共に感覚種をまたがるクロスモーダルな性質を持つ。絹,金属やプラスチックなどの表面の素材感や手触り感については視覚と触覚が互いに補足しあい,協同することによって質感の認知が達成される。しかし,このようなクロスモーダルな属性による質感認知の脳内処理メカニズムについては,ほとんど解っていない。本研究では,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理メカニズムを究明し,質感認知特性に基づいた視・触覚オブジェクト加工システムの研究開発及び試作を行うことを目的としている。 平成26年度では,視覚と触覚情報が異なる場合の質感認知fMRI実験を設計し,実施した。このような視覚刺激と触覚刺激が不整合条件の実験を行うことによって,照合が一致せず,視覚と触覚の「統合過程」と「感覚と記憶像の照合」の脳内処理過程を検討した。触覚と異なる視覚入力がある場合の触覚による質感の認識の脳内システムを検討した。また,視覚入力がある場合に,昨年度に同定した脳内システムに加えて視覚システムが機能するがそれがどのようなダイナミズムをもつかを検討した。これらにより,視覚と触覚情報が非協調的に関与する場合の質感認知におけるクロスモーダルな脳内処理モデル(非協調的モデル)を構築して,検証実験の検討も行った。さらに,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理の協調的モデルと非協調的モデルを統一するモデルの提案もできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では,(1)視覚と触覚情報が異なる場合の質感認知の脳内システムの検討と(2)視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理の協調的モデルと非協調的モデルを統一するモデルの提案が目標とした。計画通りのfMRI実験を設計・実施して,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理ネットワークの検討ができ,モデルの提案もできた。従って,当初の計画とほぼ一致しており,概ね順調に進んでいると考える。一方,研究を進めることにより人間のクロスモダールな脳内処理メカニズムは非常に複雑であることが明らかになってきた。今年度では,計画通りの実験実施及びモデル提案ができたものの更なるモデル検証実験が必要不可欠である。現在,モデルの検証実験の枠組みもできており,順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では,質感認知特性に基づいた視・触覚オブジェクト加工システムの試作と加工システムの評価実験の実施とシステムの改良を目標としている。これらの目標を達成するために,視覚と触覚のクロスモーダルな質感認知の脳内処理モデルに基づいた質感情報データベースの構築は必要不可欠である。一方,前述のように,更なるモデル検証実験が必要のため,新年度の研究計画の実施に影響を与えると思われるが,その影響を最小限に抑え,システムの試作と検証実験を同時に進む予定である。
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