研究概要 |
状態密度の小さいグラフェンと金属の結合機構は,単原子層故理想的な状態から大きく変調を受けることが予想されるため,理論と実験の両側面から研究が行われてきた.特にグラフェン電子デバイスにおいて,コンタクト領域の金属/グラフェン/SiO2構造におけるグラフェンの状態密度はコンタクト抵抗低減への鍵となるが未だ報告されていない.本年度は,結合機構を正確に抽出するために,レジストフリープロセスで作製したデバイスにおいて,金属が接触したグラフェンの状態密度を容量-電圧測定によって量子容量として抽出した.相互作用の大きく異なる金属間での状態密度の比較から,グラフェン/金属界面の結合機構を系統的に検証を行った. 容量-電圧測定の結果から,Si空乏層形成由来の容量変調に加えて,Au,Ni電極共に量子容量に起因する容量低下が見られ,Au電極のデバイスでは特にOV近傍で顕著な窪みを観測した.等価回路をもとに量子容量を抽出するとAuが接触したグラフェンはゲートバイアスによって大きく変調し,Dirac point近傍を除いて理想的なグラフェンの量子容量と概ね一致した.一方,Niが接触したグラフェンはゲートバイアスによる変調量が非常に限定されており,線形の分散関係が崩れている.これはグラフェンの・電子が,Auのs電子とは分子間力による物理的結合をしており,Niのd電子とは化学的な結合軌道を作るためと考えられる.以上のように,初めてコンタクト形状におけるグラフェンの量子容量の測定に成功した.
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