研究課題/領域番号 |
24686043
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 敏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (40359667)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フォトニック結晶 / ナノ共振器 / ゲルマニウム / 歪制御 |
研究実績の概要 |
ゲルマニウムは間接遷移半導体でありながら、そのバンドギャップと直接遷移バンドギャップのエネルギー差が小さいため、シリコンフォトニクス技術で期待される高効率シリコン系発光及び光源を実現できる可能性があることから、近年注目を集めている。本研究では、ナノビーム型フォトニック結晶ナノ共振器を用いて、歪による物性制御とナノ共振器による輻射場制御を融合することにより、ゲルマニウムの直接遷移発光の高効率化を実現することを目指している。平成25年度には、圧縮性窒化シリコン膜とナノビーム構造を支持するパッド構造を用いることで、高歪ゲルマニウムフォトニック結晶ナノビーム共振器を実現できることを見出した。 平成27年度には、上記構造を実現するために、まずゲルマニウムフォトニック結晶ナノビーム共振器の形成技術開発を進めた。L3型共振器構造を対象に、特にエッチング技術を中心にプロセス技術の最適化を進めることにより、Q値~1,350を実現するまでに至った。この値は、ゲルマニウム二次元フォトニック結晶ナノ共振器などのこれまでの報告を凌ぐものであり、ゲルマニウムフォトニック結晶ナノ共振器として世界最高の値である。また共振器モードの波長、Q値の励起光パワー依存性から、励起光パワーの増加にともなう試料温度の上昇、自由キャリア吸収の増大が生じていることを明らかにした。また、ゲルマニウム上への窒化シリコン膜の堆積についても、学内共同研究の形で展開した。その結果、ゲルマニウムと窒化シリコン膜の密着性が十分でなく剥離が生じてしまうことが判明し、表面処理や成膜条件などの条件の見直しが必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲルマニウムフォトニック結晶ナノビーム共振器については、その形成技術が確立され、ゲルマニウムフォトニック結晶ナノ共振器として世界最高のQ値を実現することができた。窒化シリコン膜については、作製条件の最適化などが必要であることが明らかとなったが、他の共同研究先などとの連携により、対応可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
確立した作製技術を用いて、実際に目的とする高品質格子変調型フォトニック結晶ナノビーム共振器の作製に取り組むとともに、窒化シリコン膜については、複数の可能性を検討し密着性の問題の解決を図り、ゲルマニウム膜への歪印加の実現を目指す。最終的には、これらを組み合わせて、ゲルマニウム発光の増強・制御を実現することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゲルマニウムフォトニック結晶ナノビーム共振器については、その形成技術が確立され、ゲルマニウムフォトニック結晶ナノ共振器として世界最高のQ値を実現することができた。一方、目的とする高品質格子変調型フォトニック結晶ナノビーム共振器を実現するために必要な窒化シリコン膜については、作製条件の最適化などが必要であることが明らかとなった、そのため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ゲルマニウムフォトニック結晶共振器への歪印加の実現するため、高品質格子変調型フォトニック結晶ナノビーム共振器の作製技術の更なる高度化を図るとともに、窒化シリコン膜の形成技術開発を進める。そのための、材料費、プロセスガス、光学部品などの消耗品に充当する予定である。
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