研究課題/領域番号 |
24686045
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高性能レーザー / 磁性 / 先端機能デバイス / 情報通信工学 / ナノ材料 |
研究概要 |
光メモリの基本となる小型の一方向発振リングレーザを実現するためには、必要な光アイソレーションを見積もり、実現することが重要である。リング共振器の透過特性に一方向伝搬特性を考慮し、Lamb方程式により時計回り・反時計回りの透過率、及び、規格化電流-光出力特性を計算した。リング共振器を伝搬する光のうち、9割が共振器内に分岐し、再び周回するという条件の下で、一方向発振に必要な光アイソレーションを見積もったところ0.16 dBであり、長さ80umで実現するためには2.0dB/mmの消光比が必要であることが明らかになった。上記の光アイソレーションを実現するための半導体光アイソレータの構造を明らかにした。上記の見積をもとに小型の光スピンメモリを実現するための曲げ半径の小さい小型のリングレーザと整合性のよいハイメサ導波路型TEモード受動型半導体光アイソレータの設計・作製・評価を行った。反応性イオンエッチングにより導波路幅2, 2.5umのInGaAsP/InPハイメサ型導波路を製膜し、側壁に膜厚36nmのAl2O3バッファ層を介して強磁性金属(Fe50Co50)を製膜し、TEモード光アイソレータを作製した。波長1550 nmにおいて、上記デバイスの伝搬損失と消光比を評価したところ、導波路幅2umのデバイスでは前進光伝搬損失と消光比はそれぞれ32.6dB/mm, 3.3dB/mm、導波路幅2.5umのデバイスでは前進光伝搬損失と消光比はそれぞれ90dB/mm, 1.3dB/mmとなり、上記で求めた条件を実現することができた。電子線リソグラフィーとドライエッチングによって加工し、リング共振器を作製した。 以上の研究成果は1件の査読付論文(英文)、1件の国際会議プロシーディング、1件の国内会議研究会論文、1件の国際会議招待講演、1件の国際会議論文、5件の国内会議論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハイメサ導波路型TEモード半導体光アイソレータとリングレーザの集積プロセスを確立する必要がある。集積プロセスの確立には電子ビーム描画が必要であるが、共用のEB描画装置を更新したために重ね合わせ工程が未確立であり、研究は遅れている状況である。描画装置更新の間に小型光メモリの実現に向けた光アイソレーションを見積もり、見積もられた光アイソレーションを実現するハイメサ導波路型TEモード受動型半導体光アイソレータを実現した。現在、新規描画装置を用いたリング共振器の描画条件を確立し、ドライエッチング条件は確立している。今後、集積プロセスのための重ね合わせ条件を確立する。
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今後の研究の推進方策 |
新規電子ビーム描画によりハイメサ導波路型TEモード半導体光アイソレータとリングレーザを重ね合わせ描画する工程を確立し、一方向発振リングレーザを作製する。さらに一方向発振リングレーザの小型化と低動作電流化を実現する。光注入同期と一方向発振リングレーザの自己保持機能によって光メモリ動作を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
光メモリ実現の基となる一方向発振リングレーザ作製のための半導体ウエハの納入が見積書に記載した時期より遅れ、平成26年5月に納品が遅れることになった。当初、平成25年度の科学研究費補助金と学術研究助成基金助成金により支出を予定していたが、年度を超えて納品が遅れることになった。以上の理由により次年度使用額が「0」を超えることになった。 上記理由の半導体ウエハが納品されしだい、平成25年度分の学術研究助成基金助成金により支出する予定である。
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