研究実績の概要 |
研究課題・目標であるリングレーザを用いた大規模光メモリを実現するには、小型のリング共振器が必要である。光導波路の伝搬損失を低く抑え、リング共振器の小型化に伴う曲げ損失を把握し、これを低減する必要がある。今年度は電子線描画と反応性イオンエッチングによる導波路損失の低減に取り組んだ。エッチング時の投入電力の最適化によって平成25年度では4.9 dB/mmであった直線状光導波路の伝搬損失を3.7 dB/mmまで低減することができた。また、曲げ半径が10, 30, 50 umの曲げ導波路を作製し、360°の曲げに伴う放射損失(TEモード)を測定・評価したところ、曲げ半径50 umでは5.86 dB, 30umでは6.29 dB, 10umでは26.21 dBであった。一方、有限差分時間領域法によって見積もった上記曲げ導波路の放射損失は曲げ半径それぞれに対して、1.56 dB, 2.20 dB, 5.47 dBであった。エッチング時に生じる導波路側壁の荒れによる散乱損失を低減することができれば、さらに放射損失を低減できると考えられる。 また、リングレーザを集積するために、すべての作製工程を電子線描画により完遂するための作製プロセスを考え、条件出しを行った。リッジ型リング共振器導波路を作製し、曲げ半径が300umで、方向性結合器の導波路間隔が1umの時、方向性結合器長が100umの時に、リング共振器における共振が最大となることが、透過スペクトルの測定結果より明らかになった。電子線描画におけるポジ型、ネガ型レジストの描画条件を明らかにし、電極を作製するための条件を明らかにした。 これらの実験により大規模光メモリの実現に大きく前進した。 以上の研究成果は論文4報、国際会議1件、国内会議9件にて発表した。
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