研究課題/領域番号 |
24686046
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
香川 景一郎 静岡大学, 電子工学研究所, 准教授 (30335484)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | センシング / 撮像素子 / 高速撮像 / 複眼 / 計算機イメージング |
研究概要 |
平成24年度に試作した撮像素子の評価を行い,素子自身の時間分解能が10nmであることを確認した.また,サブアパーチャのもつメモリに任意の2値シャッタパターンを書き込み,電荷変調と蓄積が可能であることを確認した.素子上に3×3個のレンズを配置し,それら自身または対物レンズと組み合わせたカメラシステムを構築した.光産業創成大沖原講師の協力を得て,レーザプラズマの時間分解計測を試みた.トリガの発生に問題があり,高速な時間分解はできなかったが,実観察のための準備ができた.感度,時間分解能を画素・制御回路の両面から再設計し,前年度のセンサを改良したものを試作した.評価は現在進行中である.撮影した時間多重化されたマルチアパーチャ画像から,時間分解した超高速画像を復元するプログラムを開発した.まず,任意のシャッタパターンを与えた時に得られるマルチアパーチャ画像をエミュレートするプログラムを作成した.次にソルバとしてTVAL3を利用した画像復元プログラムを構築した.これらを利用し,アパーチャと同数のシャッタパターンにおいて全てのシャッタがオフになる期間が無いという拘束条件のもとで,最良のPSNRを与えるシャッタパターンを見つけるプログラムを作成した.12枚の入力画像から,センサノイズ,フォトンショットノイズを加味して6つの時間多重画像を生成し,そこから12枚の画像を概ね良好に復元し,圧縮率2倍の超高速撮像が可能であることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した目標について,ほぼ100%達成することができた.また,最終年度に行う予定であった,性能を改良した撮像素子の設計についても平成25年度に完了することができたため,最終年度はカメラシステムの構築および実現象への適用に専念することができる.画素については,時間分解能評価を行い,10nsの時間分解能があることがわかった.また,画素構造を改良し,2段電荷転送を行うことで低ノイズ化と高感度化を図った.撮像素子については,平成24年度に前倒しして試作した超高速マルチアパーチャ撮像素子の評価ボードを試作し,撮像動作を検証した.その結果,いくつかの不具合が見つかったものの致命的ではなく,撮像素子の動作タイミングを修正するなどして,撮像素子を動作させることができた.これらの不具合を解決した上で,さらに時間分解能を向上するために,レイアウト後に寄生抽出シミュレーションを行い,さらにそれをレイアウトにフィードバックし,試作を行った.復元アルゴリズムに関して,一般に公開されている圧縮センシングのソルバであるTVAL3を利用し,超高速マルチアパーチャ画像から時間分解画像を復元することに成功した.また,良好な復元結果を与えるシャッタパターンの設計も行った.
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今後の研究の推進方策 |
画素・撮像素子については,平成25年度に試作した撮像素子の評価を進め,時間分解能の改善,低ノイズ化の効果などを定量的に確認する.復元アルゴリズムは,平成25年度にほぼ完成しているが,結像レンズの収差などを考慮した結像モデルをソルバに組込,撮像素子により取得したマルチアパーチャ画像から時間分解画像を復元する.開発した撮像素子を用いたカメラを完成させる.平成25年度は結像レンズが3×3個に留まっていたため,直径1mmのレンズの外形加工を行い,それらを組み合わせることで,5×3個のサブアパーチャ全てを用いて撮像を行えるようにする.そのカメラを用い,大阪市立大学と共同して,高分解能・広レンジのtime-of-flight距離センサへの展開を試みる.また,光産業創成大と共同して,レーザプラズマの時間分解計測を行う.高感度応用への試みとして,蛍光寿命イメージングに適用し,nsオーダの時間分解能をもち,ビデオレートに近いスピードで蛍光寿命を動画をして取得できる新しいシステムを実現する.
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