前年度に試作した改良版CMOSイメージセンサの時間分解能特性を計測した.シャッタパターンを生成するディジタル回路の問題で200MHzまでしか動作しなかったため,最高時間分解能(1フレーム当たりの時間)は5nsに留まった.前述のCMOSイメージセンサに適合するレンズアレイを試作した.市販の焦点距離3mm,外形1.0mmのダブレットレンズの両側をカットし,横0.7mm,縦1.2mmピッチで横5個,縦3個配列し,接着剤により固定した.観察対象が小さい場合,この前方に対物レンズを配置して利用した.圧縮サンプリングのソルバーとして,インターネット上でソースコードが公開されているTVAL3を用いた.復元像の再現性をPSNRを用いてシミュレーションにより評価し,一定の拘束をかけた条件で,再現性の良いシャッタパターンを選んだ.測定対象として,ナノ秒YAGレーザの2倍高調波による空気のブレークダウンプラズマを選択し,シングルショットによる超高速撮影を試みた.イメージセンサを連続撮影状態とし,プラズマ発光をトリガとして撮影を停止して画像を読み出した.15個のマルチアパーチャ画像から逆問題を解くことで,1枚当たりの時間分解能5nsで32枚の連続画像を復元することに成功した.これは,シリコンイメージセンサにおける世界最高速度である.また,圧縮しない状態でシングルショット撮影した結果と比較し,両者が近いことを確認した.マルチアパーチャ画像に含まれる視差を十分補正できなかったこと,レンズ間の明るさの違い,歪曲収差などが原因で,これらが完全には一致しなかったと考えられる.また,USAFチャートとピコ秒パルスレーザで照明し,繰り返し蓄積により圧縮撮像した.圧縮撮像ではシャッタのデューティ比を50%と高く設定できるため,圧縮しない場合の6.7%(~1/15)よりも高いS/Nの画像を復元することができた.
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