研究概要 |
本研究では,今後の基地局連携セルラネットワークの実用化を見据えて,従来のセルラネットワークから新たに必要となるバックホールネットワーク,基地局ハードウェア,および信号処理アルゴリズムを提案し,試作実装によりその実用性および有効性を証明することを目標としている.本研究課題の初年度である平成24年度は,(1)共有型RRHのハードウェアアーキテクチャの設計,(2)自律型動的クラスタリングアルゴリズムの構築,および他研究機関と連携した(7)国際標準化活動を行った.(1)では次年度以降に試作するハードウェアの設計を行った.本研究課題で採用する提案手法では,従来手法と異なり1つの光張出し無線部(RRH)を複数の基地局ユニットが共有することで,ユーザのロケーションに応じたダイナミックなクラスタリングを実現する.研究項目(1)では共有型RRHのハードウェアアーキテクチャを明らかにしただけでなく,共有RRHを活用した非線形干渉キャンセラの提案も行った.研究項目(2)では,項目(1)のアーキテクチャを採用する複数の基地局ユニットにおいて,自律分散的に競合することなるクラスタリングおよびクラスタへの無線リソース割当てを行う制御アルゴリズムを構築した.また提案アルゴリズムの特性をセルラネットワークのシステムレベルシミュレータを用いて評価し,セルエッジスループットを従来ネットワークに比べて100%近く改善することを明らかとした.これらの成果は国際学会で発表するとともにジャーナルへの論文投稿を準備している.(7)の国際標準化に関しては国際標準化団体3GPPにおいてその基本コンセプトが採択されたものの,基地局連携を実現するバックホールネットワークの構造までは踏み込めていない.今後はより概念を拡張したクラウドRANを標準化する団体などと連携してバックホールの改変を推し進めたい.
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初予定通り,(3)基地局連携MU-MIMOのための連携ユーザスケジューリングアルゴリズムの構築,(4)クラスタに割当てる無線リソースの最適制御アルゴリズムの構築,(5)共有型RRH基地局連携モジュールの試作,および項目(7)の国際標準化活動を行う.(5)では,当初予定を変更し従来型RRHは他のプロジェクトで開発したハードウェア〓用し,そのハードウェアのRRH部を交換する形態で共有型RRHモジュールを試作する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度である平成25年度は当初予定ではRRH基地局連携試作システムの費用として980万円を計上していたが,予算が削減されたため平成24年度の支出を最小限とし助成金未使用額100万円を次年度経費と合わせで使用することで対応することとする,また当初予定を変更し従来型RRHは他のプロジェクトで開発したハードウェアを借用し,そのハードウェアのRRH部を交換する形態で共有型RRHモジュールを開発することでモジュール開発費を500万円に削減する.
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