研究課題/領域番号 |
24686048
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
阪口 啓 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323799)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヘテロジニアスセルラネットワーク / 基地局連携 / C-RAN / 基地局クラスタリング / ユーザスケジューリング / 共有RRH / ハードウェア試作 / 国際標準化 |
研究概要 |
本研究は基地局連携技術をセルラネットワークに適用することを目的としている。最新のセルラネットワークの構成は、カバレッジの広いマクロセルにカバレッジの小さいピコ基地局をオーバーレイさせるヘテロジニアスネットワークの構成が主流になりつつある。本研究では基地局連携を適用するターゲットをこれまで明確にしてこなかったが、今後ヘテロジニアスネットワークの構成になることを鑑み、ピコ基地局をターゲットとして研究開発を進めることとした。ヘテロジニアスネットワークでは、マクロセルとピコセルのカバレッジがオーバーラップしているため、ピコセルは一様なカバレッジを必ずしも実現する必要はなく、ユーザが集中するホットスポットをピコ基地局間の連携により如何に収容するかが研究課題となる。 これらの背景の下、平成25年度は①複数ピコ基地局で基地局連携MU-MIMO通信を行うためのユーザスケジューリングアルゴリズムに関する研究、②大規模なピコ基地局連携を行うためのピコ基地局指向性(無線リソース)の最適制御アルゴリズムに関する研究、③基地局連携クラスタ間干渉の非線形干渉キャンセラに関する研究、④光張出し基地局(RRH)構成を用いた基地局連携モジュールの試作を行った。④のハードウェア試作は、他のプロジェクトで開発したハードウェアを平成25年度と平成26年度の2年間をかけて拡張を行い、最終的に4基地局で基地局連携が行えるシステムにする予定である。なお当初研究計画に含まれていた国際標準化活動であるが、現在活動が進められている3GPP Rel.12ではヘテロジニアスネットワーク自体に関する標準化が主として進められており、その上で運用するピコ基地局間の連携にまでは議論が及んでいないため本年度はその活動を見送った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、基地局連携セルラネットワークを実現するうえで必須となる要素技術およびハードウェアアーキテクチャを世界に先駆けて確立することを目的としている。平成25年度は、要素技術として①ユーザスケジューリングに関する研究、②ピコ基地局指向性の最適制御アルゴリズムに関する研究、③基地局連携クラスタ間干渉の非線形干渉キャンセラに関する研究を行い、またハードウェアアーキテクチャとして④光張出し基地局(RRH)構成を用いた基地局連携モジュールの試作を行った。全体として研究ターゲットをピコ基地局間の連携に絞ったため、当初研究計画とは多少の違いはあるが、研究の進捗は概ね順調であり、本研究プロジェクト完了時には、基地局連携セルラネットワークを実現するうえで必要となる要素技術およびハードウェアアーキテクチャが完成する予定である。なお3GPPにおける標準化では、基地局連携を実現するための参照信号などの標準化は既に3GPP Rel.11で完了しており、Rel.12におけるヘテロジニアスネットワークの標準化を経て、Rel.13以降でピコ基地局間連携の具体的な議論を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要でも記述したが、本研究では基地局連携の適用ターゲットをヘテロジニアスネットワークにおけるピコ基地局に絞り込む。その理由は、マクロ基地局間の連携に比べるとピコ基地局間の連携は比較的容易に実現でき、また連携技術導入に対するシステム容量の利得が大きいからである。そのために平成26年度は新たな研究項目としてピコ基地局間連携通信方式に関する検討を追加する。この項目では、平成24年度と平成25年度に研究を行った動的クラスタリングに関する研究、ユーザスケジューリングに関する研究、無線リソース制御に関する研究、および非線形干渉キャンセラに関する研究をピコ基地局環境に応用し再設計を行う。またハードウェアの試作では、平成24年度に設計した共有型RRHハードウェアアーキテクチャをピコ基地局環境に適した構成に変更し、平成25年度に開発した基地局連携MIMO信号処理ボードに新しく開発する基地局連携ファームウェアとして実装する。また他のプロジェクトで開発したハードウェアを拡張する形態で3GHz帯に対応した光張出し基地局(RRH)を4台開発し、同じく他のプロジェクトで開発したハードウェアを拡張する形態で基地局連携MIMOのフィードバック機能を搭載したセルラ端末モジュールを開発することで、基本的な基地局連携通信のプロトタイプシステムを完成させる。また国際標準化ではRel.12に加えてRel.13への発展を見越して、光張出し基地局を前提とした基地局連携通信すなわちC-RANを実現するための標準仕様の策定を押し進める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
基地局連携ハードウェアの試作費が当初予定よりも高額となり、研究補助員の雇用を取り止め物品費に充当したため、当初の見込額と執行額に差異が生じた。 研究計画に変更はなく、前年度研究費も含め、当初予定通りの計画を進めて行く。
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