本研究では,植物工場における最適な栽培環境管理システムの開発を目的として,植物生体電位応答を用いた植物の生理活性状態モニタリング技術についての研究を行った。植物生体電位は,植物細胞内外で発生するイオン濃度差に起因する電気信号で,植物の生理活性状態をリアルタイムで観測することが可能である。これまでの研究によって,生体電位応答が光合成活性と相関があることを明らかにしており,この関係から,生体電位を用いた植物の生理活性モニタリングシステムの開発が可能であると期待されている。 本研究における対象植物には,植物工場で一般的に栽培されている葉菜類のほか,周年での安定供給や機能性の向上が期待される果菜類を用いた。本研究で導入した小型植物工場で栽培した植物を実験に用い,マイコンを用いた植物生体電位応答による栽培光源制御システムを開発し,光合成活性の向上および,省電力化が可能であることを示唆した。 また,イチゴ(品種:エラン)を対象とした実験では,赤,緑,青色単色光および,それらの波長を組み合わせて光照射したときの生体電位応答から,光合成活性の向上には赤色光が最も効果的で,さらに,緑色光を30%程度追加することで,さらに光合成活性が向上しており,生体電位応答によってその関係を明らかにできる可能性が示唆された。 以上の結果から,植物工場における栽培環境管理および評価のために,植物生体電位測定が有効であることが示唆された。
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