研究概要 |
本研究では,骨材の体積変化機構を地質・岩石学的に解明し,骨材の体積変化に対する岩石学的評価法を構築することを目的としている。平成24年度は,まず地質・岩石学的観点から多様な骨材を日本各地から採取し,それらの岩石学的評価を行う。岩石学的評価の方法としては,偏光顕微鏡を用いた観察を基本として,骨材の岩石学的特徴を抽出した。また,骨材の体積変化実験として,岩石学的評価を実施した骨材単体もしくはその骨材を用いたモルタル・コンクリートの体積変化に関する実験を開始した。実験は長期間にわたるものであるため,現在も進行中であるが,平成24年度における結果から,骨材の体積変化を支配する岩石学的特徴を一次的に抽出した。骨材収縮を支配する要因として,ある種の鉱物の存在の可能性を指摘できた。これらの鉱物は岩石の成因に密接に関係し,当該骨材が続成作用から変成作用に達した場合には収縮挙動が異なる可能性が明らかになった。しかしながら,収縮量そのものは当該鉱物の量だけでなく,骨材自身のヤング係数や岩石の成因に起因する空隙の存在によって大きく変化する可能性が高いことも示唆されたため,さらにメカニズムを追及するため,平成25年度においてはより詳細なキャラクタリゼーションを実施する予定である。 骨材膨張のうちASRについては,ASR膨張を支配する反応性鉱物を改めて整理した。また,偏光顕微鏡の観察結果から,骨材の岩石学的特徴によって,生成物の膨張圧発現機構が異なることを明らかにした。また,簡易的な予測手法として,加速コンクリートプリズム法を用いて実構造物における実配合コンクリートの簡易なASR膨張の予想法を提案した。本手法は簡易ではあるものの,実環境に暴露されたコンクリートの膨張挙動を概ね再現することが可能であった。今後,岩石学的評価に基づいたモデルの高度化を進める予定である。 また,海洋環境下に暴露したコンクリートに生じた膨張ひび割れ現象に着目し,この劣化メカニズムを偏光顕微鏡によって詳細に調査した。その結果,海洋環境におけるコンクリートの膨張ひび割れは骨材の影響よりもセメントペーストの腐食による影響が大きい可能性を示した。偏光顕微鏡を用いて観察した結果,ひび割れの内部に多層構造を持って沈殿した非晶質物質が見られ,これはセメントペースト由来のものと考えられたが,骨材との化学的相互作用によって生成した可能性も否定できない。平成25年度において化学分析によって生成物の詳細分析を行い,その膨張機構を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当所の目標をおおむね順調に達成している。骨材収縮については,平成24年度の目標とした骨材の体積変化を支配する岩石学的特徴の一次抽出まで実施した。また,骨材膨張であるASRについては,加速コンクリートプリズム法を用いて実構造物における実配合コンクリートの簡易なASR膨張の予想法を提案することができ,計画以上に進展した。
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