研究概要 |
平成24年度は,地震応答スペクトルの距離減衰式を構築し,そこで得られる地点補正項を利用して,地震観測点の地盤増幅特性を評価した.具体的には,2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に代表されるようなマグニチュードが大きい近年の地震を選択して,断層距離,マグニチュード,震源深さを説明変数とする地震応答スペクトルの距離減衰式を構築した.構築した地震応答スペクトルの距離減衰式と観測値の残差(地点補正項)を用いて,地震観測点の地盤増幅率の周期特性を推定した.防災科学技術研究所が運営する強震ネットワーク(K-NET)および基盤強震観測網(KiK-net)を対象として検討を行った. さらに,得られた地点補正項から推定される地盤の増幅特性をKiK-net観測点における地中-地表間の地震動伝達関数と比較した.その結果,地点補正項の周期に対する振幅形状は伝達関数の振幅比の形状と比較的よく似ていることが分かった.このことから,地点補正項は表層地盤の増幅における周期特性を表す一つの指標として有用なものと考えられる. 以上のような地点補正項のもつ性質を検証するため,首都圏と対象としてライフライン事業者が高密度に取得している地表面地震記録や,首都圏地震観測網(McSO-net)で観測された地中の地震観測記録の収集,整理を行った.東京都を対象として,東京ガス(株)が運用する超高密度地震防災システム(SUPREME)での地表面地震記録とMeSO-netの地中地震記録を用いて,表層地盤の増幅特性を推定した.次年度以降,この検討結果と地点補正項から推定される地盤増幅特性を比較し,表層地盤の増幅特性を詳細に推定することを考えている.
|