研究概要 |
これまでの研究(科学研究費若手研究(B),課題番号:21760377, 19760331, 17760396)では,降雨時および降雨後の表層すべり型斜面崩壊を対象とした現地計測技術,数値解析手法,斜面安定度評価システムの開発およびシステムの実現可能性の検討を行ってきた。本研究では,これまでの研究成果に加え,システムの精度向上には地盤調査(測量,ボーリング試験,標準貫入試験,サウンディング試験,室内土質試験など)が重要な役割を担っていると考えられることから,地盤調査,現地斜面観測技術,数値解析からなる降雨時・降雨後の斜面安定度評価システムの確立を行う。そこで,(1)システムの実用化に向けた取り組み,(2):地盤形状と地盤構成の可視化手法の提案,(3):斜面安定度評価手法の開発に関する研究に取り組むことを目的としている。 平成24年度については,以下の内容について取り組んだ。 (1)現地斜面計測結果を利用した斜面安定解析手法(不飽和浸透解析+斜面安定解析「Janbu法」)の改良に取り組んだ。具体的には,Janbu法において,不飽和土中の浸透力および不飽和状態時の浮力の取り扱いについて検討し,解析手法に取り入れ,不飽和時の斜面安定解析手法の開発に取り組んだ。また,自作した不飽和浸透解析プログラムの妥当性の検討を行った。 (2)数値解析の解析領域および境界条件,材料条件の設定に利用するため,貫入試験と測量結果を組み合わせた地盤形状および地盤構成の可視化に関する研究に取り組んだ。本年度は,その実現可能性および手法について地質調査の技術者らと検討を行った。また,立命館大学敷地内での動的貫入試験および3Dスキャナー測量を実施し,貫入試験と測量結果を組み合わせた地盤形状および地盤構成の可視化に関するデータ蓄積を行った。 (3)SPH法を用いた地下水位の変動に伴う斜面変形挙動解析およびせん断強度逓減法を利用した斜面安定解析用プログラムの開発および改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不飽和斜面の安定解析手法については,不飽和土中の浸透を考慮した手法の提案を行うことができ,当初の予定よりも進展した。地盤形状および地盤構成の可視化に関しては,所属機関の変更に伴う,研究環境の変化のため,ややデータ蓄積などが計画より遅れたが,一方で,地質調査技術者との検討を予定以上に実施することができた。SPH法を用いた斜面安定解析手法の改良については,おおむね計画通り開発を進めることができた。以上のことから,おおむね順調に進呈しているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度で開発された手法および蓄積データを用いて,それらの妥当性の検証を行っていく。また,SPH法を用いた解析手法については,オーストラリアのMonash大学のBUI講師らのアドバイスをもとに改良を行っていく。 地盤形状および地盤構成の可視化に関しては,引き続きデータの蓄積および地質調査技術者との意見交換を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,主に平成24年度に開発された手法の妥当性検証を行う。これまでに実施してきた室内土槽試験結果および現地計測結果を用いて,不飽和斜面の安定解析手法およびSPH法を用いた斜面安定解析手法の妥当性の検証を行う。必要に応じて,プログラムや手法の改良を実施する。特に,SPH法の改良に関しては,オーストラリアのMonash大学のBUI講師らと協力し,実施していく。 地盤形状および地盤構成の可視化に関しては,立命館大学敷地内にある調査が容易な個所においてさらにデータを蓄積していく。また,鹿児島市内で取得可能なボーリングデータなどを用いて,地盤構成の可視化について検討を行う。 また,「直接経費次年度使用額」については,ソフトウェアのインターフェイス部分は外部委託予定であったが,市販ソフトのFEMAPをベースに開発することとしたためである。平成25年度では,ソフト改良部分にその費用を利用する予定である。
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