研究概要 |
複列砂州は、少なくとも直線状の水路において長時間にわたり安定に維持されることは稀であり、河床波形成の初期では高モード成分が大きな波高増幅率を持つものの時間の経過に従って次第に大きな波高を有する低モード成分が卓越するようになることが理論的に説明されている。一方で、実河川においては複列砂州が長期間にわたり安定に維持されることは少なくなく、既往の直線水路における実験や理論解析の結果との間の大きな乖離は見逃せない。 平成24年度は、複列砂州を維持する実河川は縦断方向に流路幅が拡幅と狭窄を周期的に繰返す共通点を有することに着目し、まず、拡縮流路における複列砂州の形成や維持およびそこで見られる水理について調べた。つぎに、拡縮流路で見られる特有の流量フラックスの横断方向分布が上流端境界条件に与えられた際の河床波および流路の幾何学形状の変化について調べた。そして、これらを総合することで、拡縮流路そのものの形成とそこに形成される複列砂州の相互関係について調べた。 拡縮流路を用いた河床変動の数値実験を行ったところ,拡縮形により両岸から河床波の形成初期に発生する強制砂州が流心で相互干渉することで河床形状の概形が決定され,その後自由砂州成分の不安定性が加わることで複列砂州の形成とその後に長期間にわたり維持されることがわかった.引き続いて拡縮流路の形成について調べた、側岸浸食を許容した直線流路の上流端に流量フラックス分布の偏在を与えたことにより発生した強制砂州が初期に河床形状と側壁形状の概形を決定し,川幅水深比から規定される不安定性が複列砂州を生じさせることが示された.また、上流端の境界条件の偏在に比べ、側岸浸食が許容されることは、複列砂州のような強い不安定性を要求する河床波の形成に大きく寄与することが合わせて示唆された。
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