研究課題/領域番号 |
24686057
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
安田 浩保 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00399354)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複列砂州 / 拡縮流路 / 河道設計 |
研究概要 |
河道内における樹林化の解消案は、樹林伐採や植生域の冠水頻度を向上させるための中水敷造成など植生管理に対する対策方法がほとんどである。これらの対策は樹林化の根本的な原因の究明に至らないままの対処療法にすぎない。本研究はこれまでの対策から一線を画し、自然営力による河床材料の活発な更新を促すために複列砂州を河道内地形の基本とすることで、樹林化対策の抜本的な解決を行う。以下の項目に平行して研究を進めてきた。 (1)拡縮水路と直線水路を用いた室内移動床実験 前年度までに複列砂州の形成と維持については縦断方向に川幅が変動する拡縮水路を用いることにより実現可能であることを数値実験で実証している。今年度は数値実験から得られた複列砂州が維持されやすい水理条件と拡縮水路の平面形状を組み合わせた条件下で室内移動床実験を行った。拡縮水路の平面形状の比較対象として直線水路においても実験を行った。その結果、拡縮水路内では複列砂州が形成され、長期間に渡って維持されやすいことが確認された。また、同一の水理条件下で直線水路において実験を行った結果、単列砂州が形成されたことから平面形状の違いが河床形態に強く影響することが明らかとなった。 (2)直線水路の平面形状が河床形態に及ぼす影響について 既往の研究で報告されている複列砂州から単列砂州への移行が生じる原因の解明を試みた。既往の研究では河道の平面形状の影響を無視するために直線水路を頻用してきたが、改めて直線形状が河床形態に与える影響を検証した。 初期河床に複列砂州を模擬した河床の起伏を与え、形成される河床形態についての数値実験を行った。その結果、初期に与えた複列砂州の形状は維持されず、最終的には単列砂州の形成が確認された。つまり、単列砂州は直線水路の平面形状に応答した河床形態であることを間接的に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は拡縮水路を用いた水路実験から平面形状に由来した強制砂州成分による複列砂州の形成と維持について明らかとなった。しかしながら、現状では平面的な河床の起伏を容易に計測する技術がないため、写真から河床形態を判断する定性的な評価に留まっており、面的計測情報が不足している。そこで、新たに下記に示した時空間的に連続な情報を採取する計測技術の開発に取り組んでいる。 (1)デジタルポイントゲージを用いた水位と河床位の同時計測 2軸光ファイバセンサを応用したデジタルポイントゲージにより、水位と河床位を同時に連続的に計測することが可能となった。秒単位の時間間隔で自動計測が可能となるため、これまで以上に時間的に密な計測情報を得ることが期待される。 (2)レーザーシートを用いた光学的計測 デジタルポイントゲージでは面的情報が不足しているため、新たにレーザーシートを用いた光学的計測手法の開発に取り組んでいる。レーザー光を水路上に設置したレーザーヘッドで往復運動させながら照射し、水路両岸からデジタルカメラで撮影した写真画像を解析することで、水位と河床位の時空間的に連続な情報を得ることができる。 上記の計測技術により、従来は所定の時間ごとに完全排水とその後の計測を繰り返してきたが、通水の一時停止をする必要がなくなるため、流れと河床形態の動態を把握することが可能となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、川幅が広くなればなるほど複列砂州が形成される事が理論的に示されている。これに反し、既往の室内実験や数値実験からは最終的にどのような川幅においても交互砂州上の河床形状が形成される事が報告され、理論と実現象の食い違いは十分に説明されるに至っていない。そこで、今年度は、直線水路において形成される河床形態についてさらに踏み込み、直線流路における最終的なあるいは平衡的な河床形状がどのようなものであるかを調べる数値実験を実施する。さら、直線流路における研究成果と前年度までの拡縮流路における研究成果を組合わせて自然営力によってのみ河床材料が活発に更新されて樹林化を免れやすい河道の平面形状がどのようなものであるかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品を3月納品で購入したが、支払いが4月になったものは次年度の実績報告書に含めるため、次年度使用額として生じた。 次年度使用額63,873円は3月に実験器具および、消耗品を購入してすでに執行済みである。
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