研究概要 |
平成24年度は,以下の4つの課題に取り組んだ. 第一に,被災した地方自治体や支援物資の輸送に携わった国の関係組織や関係団体が保有する記録を収集し,統計分析に耐えうるデータ形式に整理した.具体的には,紙媒体に記録された情報をデジタル化したり,フォーマットが統一されていないデータにコードを加える等,フォーマットを統一した.また,大量の欠損値を含むため,複数のデータを突き合わせながら,欠損値を合理的に埋めていく作業も行った. 第二に,整理したデータを用いて支援物資の流動実態を定量的に把握する分析を行った.具体的には,代表的な品目について,発災後からの支援物資の充足度が時間の経過とともに,どのように変化したかを定量化した.加えて,市町村間でどの程度の格差が存在したかについても指標を作成して定量化した. 第三に,支援物資を被災地に提供した企業や組織に対するアンケート調査を行った.アンケート調査を通じて,支援物資の提供先市町村を選定した理由を把握し,調査結果から市町村間で支援物資の受援量に格差が出た原因を明らかにした. 第四に,複数のNPO団体に対してヒアリングを行い,東日本大震災でNPO団体が被災地に支援物資を届ける上で果たした役割について知見を得た.具体的には,次の団体に対してヒアリング調査を行った:ワンファミリー仙台,グリーンコープ,うつくしまNPOネットワーク,ジャパンプラットフォーム,シビックフォース,セカンド・ハーベスト.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は以下の4つの研究課題に取り組む予定である. 第一に,平成24年度までの被災自治体や支援物資の輸送に携わった国の関係組織・団体の記録のデータ化に加えて,代表的なNPO団体の記録についてもデータ化を行う。 第二に,作成したデータを用いて支援物資の流動実態を定量的に把握する分析を実施する.平成24年度は主に地方自治体や国の関係組織・団体の役割に着目したが,平成25年度はNPO団体の記録についても同様の分析を行う.これにより,東日本大震災でNPO団体が果たした役割を定量的に明らかにすることを試みる. 第三に,流動実態の定量分析結果を,研究代表者らが平成24年度以前に実施したヒアリング調査結果で得られた知見等と組み合わせることで,今後の支援物資ロジスティクス計画や地域防災計画のあり方を考える上で考慮すべき視点や配慮すべき要素などに関する知見を整理する. 第四に,支援物資ロジスティクス計画を策定する上で最も重要な要素の一つである支援者と受援者のマッチングを効率化するためのシステムを数理モデルとして定式化して,その有効性を定量的に検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度までの研究成果を国内外での学会発表や学術雑誌への投稿を通じて情報発信するため,成果発表旅費を50万円,研究成果投稿料を20万円,計上している.成果発表を行う学会としては,土木計画学研究発表会や日本NPO学会などを,研究成果を投稿する学術雑誌としては,土木学会論文集を想定している. 平成24年度に引き続き,データ分析作業を継続的に行う必要がある.研究代表者の研究室に所属する大学院生3名程度にデータ分析作業をサポートしてもらうため,研究補助の謝金として40万円を計上している.
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