研究課題/領域番号 |
24686060
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
伊藤 司 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (80431708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微生物制御 / ストレス / 微生物 / 微細気泡 / 細胞外多糖 |
研究概要 |
細胞外多糖類は活性汚泥のフロックやバイオフィルムを形成する役割だけでなく、微生物細胞の防護壁を作り、薬剤に対する抵抗性を高める働きがあると考えられている。一般に細胞外多糖類の構造は微生物の種類によって異なるため、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌ではそれぞれの細胞外多糖類EPSの働きによる抵抗力も異なると考えられる。 研究室で開発した微細気泡発生装置 (Microscale finebubble generator with an oscillating mesh - MiBos) を用いてグラム陰性細菌である大腸菌、大腸菌以外のグラム陰性細菌Acinetobacter johnsonii、グラム陽性細菌Staphylococcus saprophyticusを用いて MiBosバイオリアクターで培養した時に、細胞外多糖類を抑制できるか、消毒効果を向上できるかについて検討した。 MiBosで培養された細胞はEPS生成が抑制され、細胞を覆うEPSが振とう培養に比べて非常に少ないことが蛍光レクチン染色により示された。大腸菌のようなグラム陰性細菌の細胞外多糖類EPSだけでなく、グラム陽性細菌のStaphylococcus saprophyticusに対しても細胞外多糖類EPSの生成を抑制できた。培養条件の違いにより細胞に対するストレスをMiBos培養では少なくできたためであると考えられた。またそのEPSの少なさは、塩素消毒実験によりMiBos培養による細胞の消毒効果が高かったことで証明できた。今回の実験により塩素消毒においてEPSの重要性を示すことができ、EPS生成の抑制を図れるMiBos装置の重要性も同時に示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・研究開発した技術(微細気泡発生装置MiBos)により細胞個体の活性が全体的に向上されていることを確認することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。 具体的にはMiBos培養による細胞を振とう培養と比較して次のことを確認した。 「大腸菌とStaphylococcusとAcinetobacterの各1種について、細胞外多糖類の生成抑制が抑制され、CT値で評価した薬剤(塩素)抵抗性が約10倍から30倍低下」 ・技術の応用(産業利用)の観点から、研究開発した技術は制御された空間内での微生物を活性化でき、一方で非制御空間への排出の際には消毒殺菌効果を向上させることができることから、技術の有用性を高める成果を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
1.ストレス応答評価によりストレスマネージメント指標の探索を行う。作製したリアクターを用いて、溶存酸素濃度、基質濃度、気泡径および流速条件を操作因子として、リアクターの処理性、細胞の応答、遺伝子発現応答の3つのスケールレベルで順次実験を行う。 2.ストレス応答評価によりストレスマネージメント指標の探索を遺伝子発現応答解析により行う。遺伝子発現応答は、本リアクターが細胞レベルで均一な状態を作り出すことにより、細胞のストレスレベルを反映してノイズ情報の少ないストレス応答解析ができる。完全分散の状態とストレスによりフロック形成している状態とを対象に、DNAチップ解析とパスウェイ解析を行うことで、遺伝子発現応答と代謝変化を捉える。 3.確立したストレス制御実験系とストレス評価指標を基にストレスマネージメントを実証する実験を行う。3-1 消毒試験では微生物全細胞の薬剤抵抗性を制御できることを確認できた。3-2 膜分離活性汚泥法ではストレスマネージメントによりMBRの処理性向上と膜目詰まりの抑制ができるかをを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に平成25~27年度までの3年間分の助成金を一括して前倒しして支払い請求した。前倒しの趣旨は、当初平成25年度と平成26年度に予定していた研究のうち、経費がかかり、解析に時間がかかる研究に、準備が出来次第着手できるようにするためであった。必ずしも前倒しした助成金の全額を利用するためではない。特に平成25年度は特許出願の関係で開発技術の基礎面よりも応用面での成果を優先する必要があった。実際に、平成25年度は平成26~27年度に実施予定の応用研究を行い成果を得た。これを優先したため、平成25年度に実施予定の研究の一部を実施しなかった。次年度使用額が「0」でないのはそのためである。 構築した実験系を用いて、ストレス応答評価によるストレスマネージメント指標の探索の基礎研究を行う。細胞の応答や遺伝子発現応答、細胞内外の代謝応答などのデータ解析、その他の応答解析により、総合してストレスマネージメントに有用な指標を選定する。
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