研究課題/領域番号 |
24686060
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
伊藤 司 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (80431708)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微細気泡 / ストレスマネージメント / 細胞統制 / MiBos / 細胞外多糖 / 微生物活性化 / 微生物制御 |
研究実績の概要 |
微細気泡培養(本研究室で開発している微細気泡発生装置MiBos)の効果を様々な微生物で従来法と比較した。回分培養のみならず連続培養によっても効果を研究した。 Escherichia coliの純酸素培養、クオラムセンシングにより発光現象がおこるPhotobacterium phosphoreumについて、微細気泡の培養効果を検証した。純酸素を通気した場合、振とう培養はE. coliがあまり増殖しなかったがMiBos培養では増殖を確認した。また、発光細菌の培養を比較した場合、MiBos培養は散気球培養に比べ菌体当たりの発光度が低いということが分かった。微細気泡培養は酵素活性や増殖等の個の機能を促進し、オートインデューサー(集団行動)を阻害する可能性が示唆された。これらはいずれも回分培養により行った。 実用の微生物培養装置を想定し、連続培養系で複合微生物および複合基質で微細気泡培養の効果を研究した。MiBosを用いると少ない空気量で効率的な酸素供給が可能であることを確認した。さらに連続的な基質供給における微細気泡の効果として、微生物量が多くなる、有機物除去率が高まる、微生物フロックが極端に少なくなる等の効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の最終目的は、本研究でストレス指標を解明することと、解明したストレス指標に基づいて微生物全細胞制御を実現することである。現在、ストレス指標が未解明である。そのためストレス指標に基づいた微生物反応リアクターの管理に至っていない。27年度に達成できるように計画しているが、余裕がある状態ではないため、現時点では「やや遅れている。」と考えることにした。ただし、本研究で開発している微細気泡発生装置を用いたリアクターと従来の培養を比較すると、微生物の表現型(増殖速度や細胞形態、塩素耐性など)に明確な違いが認められているため、ストレス指標解明のための実験系は様々な細菌類でほぼ確立できていると考えている。よって、これよりすみやかにストレス指標解明を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
1.ストレス応答評価によりストレスマネージメント指標の探索を行う。(昨年度から継続) 処理性と微生物ストレスを対応づけるため、リアクターの処理性、細胞の応答、遺伝子発現応答の3つのスケールレベルで行う。作製したリアクターを用いて、溶存酸素濃度、基質濃度、気泡径および流速条件を操作因子として、リアクターの処理性(3-4年目)、細胞の応答(3-4年目)、遺伝子発現応答(4年目)の3つのスケールレベルで順次実験を行う。 リアクターの処理性はTOC(全有機炭素)で捉え、細胞のストレス応答をCFU(コロニー形成)、細胞径、フロック径、フロック密度、ゼータ電位、OUR(酸素消費速度)、rRNA量、ATP、細胞膜損傷、運動性、細胞外多糖から評価する。細胞レベルのどの評価で明確なストレス応答が認められるのか、ストレスマネージメントに有用な指標を選定する。
2.ストレス応答評価によりストレスマネージメント指標の探索を遺伝子発現応答解析により行う。 遺伝子発現応答は、本リアクターが細胞レベルで均一な状態を作り出すことにより、細胞のストレスレベルを反映してノイズ情報の少ないストレス応答解析ができる。完全分散の状態とストレスによりフロック形成している状態とを対象に、DNAマイクロアレイ解析を行うことで、遺伝子発現応答を捉える。基質代謝や増殖、細胞外多糖生成や細胞維持に関わる遺伝子発現に違いが認められることを予想している。遺伝子応答解析はメカニズムの解明のみならず、ストレスマネージメントに有用な指標が得られる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
824円の次年度使用額が生じた理由は、研究支援者の人件費が未確定の状態で実際支払うことになる金額を見込んで、次年度使用額が「0円」になるように物品等を2月に購入していたのだが、人件費が見込額より824円低かったために、この824円が生じた。 このことが明らかになったのは3月末であり、その時点で824円を効果的に利用することは困難であったし、繰り越せる経費なので、その必要もなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
824円は、27年度に研究に基本的に必要な薬品等の消耗品を購入ことで効果的に利用できる。
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