コンクリート構造物において温度作用が問題となる事象としては、高強度コンクリートの爆裂現象や、作用温度が厳しいとされているトンネル火災などが挙げられ、いずれも災害時のリスクと直接深く関係しており過少視することはできない。しかしながら、高温下でコンクリートに生じる現象の捕捉は容易ではなく、そのメカニズムは未だ不明なところが多い。 そこで、本研究では、完全非破壊定量化技術である中性子ラジオグラフィ(NR)を基軸とし、NRによる局所水分挙動の測定と同時に、高温作用下におけるコンクリートの熱水分移動・圧力形成・変形メカニズムを解明することを目的とし一連の実験的研究を行った。 平成24年度は、爆裂現象化を非破壊測定により可視化することに成功し、材料調合・乾燥条件などを因子として爆裂下における水分移動現象を定量的に捉えることに成功した。これに対し平成25年度は,より詳細なメカニズムを明らかにするため、加熱過程における水分挙動や応力形成の要因を推定するため実験系の改良を行い、中性子ラジオグラフィを用いた加熱実験の測定,およびTG-DTAの結果を各温度における脱水量と仮定して水分挙動の予測を行った。その結果、100℃近傍の温度領域において水分が凝縮する現象(水分だまり)を定量的に捉えることに成功した。分析の結果、水分量の収支からは水分だまりの形成にセメント硬化体から湧き出す水分が影響していることが確認された。これらの結果から、加熱面近傍の自由水分および加熱に伴い水和物から湧き出した水分が内部へと移動し、低温領域において凝縮し水分溜りを形成するメカニズムが明らかになったとともに、加熱面近傍に形成された高圧領域に対して、水分溜りの領域が反力となって爆裂現象を発生していることが推定された。
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