研究課題/領域番号 |
24686065
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
桃井 良尚 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40506870)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シーリングファン / CFD解析 / 気流感 / 温冷感 |
研究概要 |
本研究では、エアコンとシーリングファン(以下、CFとする)を併用した空調手法の確立を目的として、まず、既往のCF気流のモデルを用いてオフィスインテリア空間を想定した定常解析を行い、冷房時にCFの設置位置が空間に形成される気流及び温度分布に与える影響について検討を行った。また、得られた結果から温熱環境評価指標である標準新有効温度SET*(2 node model)及びドラフト評価指標であるドラフト温度EDTを算出し、CFが温熱環境に及ぼす影響についても検討を行った。エアコン1台の冷房負荷を想定したCFD結果から、CFを用いた場合、風速が上昇し、SET*が低下することが示された。 次に、夏季を想定した被験者実験を行い、CF気流に長時間曝露された際の心理量・皮膚温の時間変化について考察した。上半身の部位の心理量が全身の心理量を決定する大きな要因であることがわかった。また、CFによる気流感が温冷感に影響を及ぼしており、CFの使用によりCF直下から1.1mの空間内では約2℃の室温上昇を補う効果が得られた。 また、被験者実験により測定された皮膚温データを入力条件としたサーマルマネキン実験を行い、CF気流曝露下での人体各部位対流熱伝達率を測定し、人体を16部位に分割した65分割体温調節モデル(65MN)に適用することにより、不均一な環境や非定常状態を評価できる65MN SET*を計算し、2 node SET*との比較も行った。各人体モデルについて、被験者実験による皮膚温測定結果と概ね一致し、検討した条件においては、被験者評価がよく一致することを確認した。 さらに、商用ソフトウェアを用いた空調シミュレーションとCFDとの連成解析手法について、1時点での定常計算を行い、空調シミュレーション単体の解析結果と連成解析結果の比較を行うことで、連成解析手法の計算負荷及び解析精度について基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた、シーリングファンとエアコン、シーリングファン同士の気流の干渉、壁の影響については、解析の収束性が悪く、計算時間が当初の想定以上に時間がかかってしまい、十分な条件数を検討できていない。 また、当初の予定では文献調査程度と考えていた「室内分布系における温熱環境評価手法についての検討」について、既往の研究では測定条件がシーリングファン気流を想定したものがなかったため、被験者およびサーマルマネキンを使った実験を新たに行い、既往の研究との比較を行った。そのため、温熱評価についての研究に時間的にウェイトを置いたため、他の検討についての十分な時間がかけられなかったため、全体としては多少遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度については、平成26年度に予定していた「実測による評価手法の検証」の測定ができる物件があるため、前倒しして実施したい。また、同じく平成26年度に実施予定としていた「シーリングファンの簡易設計手法の提案」についても現時点で得られた結果から、第一段階の設計手法を構築し、次年度以降にバージョンアップを試みる。CFD解析については、平成24年度に実施したが、計算時間がある程度かかるため、他の検討項目と並行して研究を進めるようにし、平成25年度~平成26年度にかけて実施する。これにより、CFDに時間をかけて検討ができる。また、計算能力の高いPCを導入することで時間の短縮を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
シーリングファンを設置した気流分布や温度分布の大きな室空間における室内熱環境予測と空調の消費エネルギー予測の両方が可能なエネルギーシミュレーションとCFD解析の連成手法の検討を行う。CFDには、ANSYS FLUENTを用い、エネルギーシミュレーションにはTRNSYS16を用いる。連成解析はこれまでに研究代表者らが既往の件において計算を試みているものの、連成解析の方法や計算時間の短縮については改善の余地があるため、まずは第一段階として、連成手法について基礎的な検討を行い、手法の開発・検討を試みる。具体的な検討内容としては、精度の高い計算を行い、それを正解値として上で、CFD解析及びエネルギーシミュレーションのそれぞれの収束計算回数やCFD解析とエネルギーシミュレーションの連成回数、空間の分割数などを減らすことで計算負荷を減らした場合の計算時間の短縮および計算精度の検討を行う。特に精度の高い解析を行うには、計算機のハードウェアの性能が高いものが必要になる。また、解析には、CFD解析およびエネルギーシミュレーションを行うためのソフトウェアも必要であるため、平成25年度はこれらの費用に研究費を使用する。また、今年度未実施だった汎用的なシーリングファンのCFD解析モデルの開発についても、非構造格子系CFD解析ソフトを用いて、形状をパラメータとしたケーススタディーを並行して行う。
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