本研究では、温熱環境改善効果及び気流感を利用して設定温度を緩和することによる省エネルギー効果が期待できるシーリングファン(以降、CFと記す)とエアコンを併用した空調手法を提案している。 実際の執務室において夏期及び冬期における座席位置での風向風速分布と温度分布の測定及び在室者による主観評価を行った。また、消費電力量測定も行った。夏期では、CF により全身温冷感・熱的快適感の改善が見られた。冬期では、CF により上下温度分布の緩和が見られた。しかし、座席によっては風速の増加による気流の不快感が生じる危険性が確認された。また、実測値から算出したSET*とエアコン及びCFの消費電力との関係から、CFの有効性について考察した。最終的に、SET* と試算した消費電力からCF 選定図を作成し、気流感空調の設計手法を提案した。 さらに、CFを用いた空調設計の設計資料に資するデータの蓄積を目的として、エアコン1台に対して周囲にCFを2台もしくは4台設置した場合に、CFの配置や冷暖房条件など種々の条件でCFD解析を行い、室内の気流分布、温湿度分布、SET*分布について考察を行った。また、CFのみを設置した場合のCF周辺気流について詳細なCFD解析を行い、気流性状の把握を行った。予備検討により、CF1台の周辺空間を解析対象空間とすることの妥当性や天井高がCF気流に及ぼす影響について把握した。今後は、予備検討を踏まえ、室の大きさとCFの風量を変化させたCFD解析を行い、居住域に形成される風速分布と上下方向の循環風量について整理を行っていく予定である。
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