研究課題
1.当初の研究目的 本研究は、中東・北アフリカ地域の都市空間に見られる多様性や共生の知恵を、現代の国際協力に基づく都市保全に活かすための、都市計画史の解明を目的とする。主な対象として、ダマスカス、アレッポ、ハマー、ベイルート、アルジェをとりあげる。2.当初の26、27年度の研究実施計画 ハマーのフィールド研究、及びダマスカスのJICAプロジェクトと、ドイツのGIZによるアレッポ保全プロジェクトの政策を比較分析する。更に、ベイルート旧市街の戦災復興プロジェクト、アルジェ旧市街の保全再生プロジェクト、更にハマーの萌芽的な修復事業について検討し、政策分析を完遂する。後半は、補足的な現地調査を実施しながら、研究成果である学術書の執筆に専念する。更に、アレッポ大学学術交流日本センターに関係者を招じて国際会議を開き、本研究の最終報告とする。3.26年度の具体的成果 昨年度までは当初の計画以上に進展しており、25年度には上記実施計画のうち、既にダマスカス研究が一応の完成を見たほか、アルジェについては仏植民地末期の共生型都市計画についての概要を解明し、ベイルートについては植民地時代から現代までの基礎的史実を解明し、それぞれ審査付論文として公刊していた。これを受けて26年度には、アルジェについては番匠谷堯二のスラム移転用の中庭式住宅地の計画理念に絞り込んで分析し、アメリカの出版社から共著の1章として出版した。ベイルートについては昨年の成果に基づきIPHSの審査付論文として発表した上で、9月に復興プロジェクトに絞り込んだ現地調査を行い、現在整理中である。一方、国際研究者交流及び国際情報交換として、アレッポ大学学術交流日本センターよりシリア人学生を研究生(2015年4月よりM1)として迎えた他、同センターとの間で現在の戦災状況に関するSkypeインタビューをも実施した(新聞で報道)。
2: おおむね順調に進展している
25年度までは当初の計画以上の進展を見ていたが、26年度はシリア内戦の長期化が決定的となったこともあって、アルジェ及びベイルートを中心に、より詳細な史実と現状の解明に充てることとなった。結果として、最終年度である27年度までの目標であったアルジェ及びベイルートの政策分析の完成は、計画通り27年度に持ち越すこととなった。国際研究者交流及び国際情報については、悪条件のなかで順当にこなした。
最終年度までに期待していたシリア内戦の終結は望めないことが明らかとなったため、既得の現地調査結果の精査と、史資料の収集・分析に基づく研究を引き続き推進する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち謝辞記載あり 3件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)
Human Mobility and Multiethnic Coexistence in Middle Eastern Urban Societies 1: Tehran, Aleppo, Istanbul, and Beirut
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http://trios.tsukuba.ac.jp/researcher/0000000877
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