研究概要 |
初年度はマルテンサイト正逆変態によって形成されるマルテンサイトドメイン間のねじれを理論(Ti-Niおよびβチタン合金)・実験(βチタン合金)の両面から解析した. Kinematic compatibility(KC)からの偏差Q(3次元回転)および研究代表者が考案した双晶関係からの偏差J(3次元回転)を晶癖面バリアントの組み合わせ全てに対して計算した.その結果,Ti-Ni合金ではNi濃度の上昇とともに格子定数が変化するために,6つのドメインからなる形態のねじれが顕著に減少することが分かった.またβチタン合金(Ti-Nb-Al)ではNb濃度の減少と共に,6種類のドメインクラスターのうち,〈211>第二種双晶で結合されるクラスターのみ,ねじれ角が顕著に減少することが分かった.これらの結果から,Ti-Ni,Ti-Nb-Alいずれにおいても,ねじれ角を合金組成によって制御可能なことが明らかになった. 電子顕微鏡および光学顕微鏡を用いた広範なサイズスケールにおよぶ組織解析と,高速ビデオカメラを用いた逆変態過程のin-situ観察から,ねじれが小さい形態ほど優先的に発生することを明確にした.またTi-23Nb-3A1(mo1%)の透過型電子顕微鏡観察では,理論値とほぼ一致するねじれが<211>第二種双晶で結合するドメイン間に観察され,それによって生じうる転位密度は10^<13>/m^2程度と見積もられた.また3つのドメインが結合した形態では,1.9度の部分楔回位が形成されることもわかり,刃状転位列に分解したとすると,転位は約20nm間隔でドメイン壁に配列することも分かった. 以上要するに平成24年度においては,ドメイン結合面でのねじれが組織形態と欠陥構造を決定する支配因子であり,しかも格子定数の制御(合金組成の調整)によって,ねじれを制御できることも明らかとなり,本課題で提唱する高性能化手法が実現可能であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ねじれ欠陥の観察・解析は順調に進行しており,特にβチタンでは優先組織形態や予測される転位密度なども明らかになった.それに加えて,平成26年度に予定していた,ねじれの組成依存性の解析を,前倒しして理論解析したところ,ねじれをゼロにできることが明らかとなり,高性能な合金を設計する上で極めて重要な知見をいち早く明らかにすることができた,よって区分を(1)とした.
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次年度の研究費の使用計画 |
低倍率でのIn-situ観察がまず先に必要であると再考し,当初計画していた透過型電子顕微鏡用加熱試料ホルダーではなく,光学顕微鏡用高速ビデオカメラシステムを導入したので,差額として助成金の次年度への繰り越し分が生じた.本年度の研究環境・進捗状況を熟慮の上,透過型電子顕微鏡用試料ホルダーの導入を検討する.
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