平成26年度は,昨年度に引き続き,ドメイン組織制御の基本指針を得る為に(1)立方晶-単斜晶変態におけるねじれと格子定数および合金組成の関係,(2)立方晶-斜方晶変態におけるねじれたドメイン構造の解析,(3)立方晶-斜方晶変態におけるメゾスケールでのドメイン組織解析,の3点を重点的におこなった. (1)これまでの成果に基づき,ドメインが2つ結合してできるドメインクラスターのねじれを消去または低減できるニチノール基合金が設計可能か,文献データを基にした理論解析によって検証し,第三・第四元素の添加によってねじれ角を0.02度(現状の1/100)まで低減可能であることが明らかになった. (2)Ti-25Ni-25Pd合金では,理論的には6種類のドメイン結合が可能だが,優先発生したドメイン結合面は,サブドメイン同士のKinematic Compatibility(KC)を犠牲にしてドメイン間の巨視的なKC条件を満足可能な3種類であり,これらのドメイン結合面には,いずれもKCからの偏差(ねじれ)が存在し,優先発生するドメインクラスターは晶癖面の不変面条件を優先した形態になることが分かった. (3)300ミクロン程度の結晶粒径をもったTi-22Nb-2Al合金の1結晶粒内におけるドメイン構造を低倍率のEBSD観察により解明した.その結果,100ミクロンオーダーで発生するドメイン種には偏りが存在し,互いに近接して群発生するグループと,互いに避け合って発生するグループが存在することがわかった.この結果から,ねじれ消去の格子定数制御を行う際には,互いに避け合って発生するグループが形成するドメインクラスターを考慮する必要がないことが明らかになった.
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