本研究においては、自己組織化電気化学プロセスと種々の表面処理法を融合した新規な手法により、極微小サイズのレンズを高密度に配列したナノレンズアレイを試作することに挑戦した。 アルミニウムをエチドロン酸およびホスホノ酢酸水溶液中に浸漬してアノード酸化すると、生成したポーラスアルミナがアノード酸化中に自己組織化し、高い規則性を持つポーラスアルミナが生成した。いずれの水溶液においてもアノード酸化電圧は200Vを超え、それらのセルサイズは500~800nm程度であった。アノード酸化によりアルミニウム上に生成した規則性ナノディンプルアレイは、その規則性により可視光の干渉を生じ、虹色の構造色を呈した。すなわち、可視光応答型ナノ構造の構築に成功した。 ナノディンプル形成試料を中性水溶液中でアノード酸化すると、アルミニウム表面にバリヤー型酸化皮膜が生成するが、アノード酸化の進行に伴って界面の平滑化が生じ、ナノレンズ形状を持つアルミナ薄膜を形成することは困難であった。一方、ナノディンプル形成試料に自己組織化単分子膜を形成したのち、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いてナノディンプル形状の転写を行うと(ナノインプリント)、ナノディンプル構造が反転した構造、すなわちナノレンズ構造を持つPDMS樹脂を作製することに成功した。ナノ構造転写PDMSは、ナノディンプルアレイと類似した構造色を発現し、可視光に応答するナノレンズアレイを作製できることが明らかになった。
|