研究概要 |
材料の力学特性は内部の微視組織に支配される.特に粒界はすべり変形の変形抵抗となるため,結晶粒径を微細化すると粒界強化により力学特性が向上する.しかし,方位差,方位回転軸などの粒界性格が粒界の力学特性におよぼす影響は明らかになっていないため,これまで提案されてきた多くの粒界強化機構の理論モデルの妥当性は実験的に実証されていない.そこで本研究は単一の粒界のみを含んだ試験片を用いた材料試験(マイクロメカニカルキャラクタリゼーション)により,これまで未知であった個々の粒界の力学特性を直接評価し,粒界性格の観点から考察することによって,新たな粒界強化機構の理論モデルを提案することを目指すものである. 当該年度は,[110]を共通回転軸とする粒界方位差10。の対称傾角粒界を有するバルク形状双結晶純アルミニウムから試験片を作製し,[110],[540],[11 -2 1],[11 -3 1],[11 -8 1】と系統的に圧縮方位を変化させた圧縮試験を施した.圧縮試験における変形応力を同一圧縮方位を有する単結晶試験片のものと比較した結果,同一の粒界であっても,単結晶試験片からの変形応力の増加量が,圧縮方位の変化によって変化することがわかった.つまり,粒界が材料の強度におよぼす影響は,圧縮方位によって変化することが明らかとなった.特に圧縮方位が[11 -3 1],[11 -8 1]である場合,変形応力の増加量が大きかった. 従来から粒界強化機構を報告されている塑性の適合性から粒界の存在による変形応力の上昇量を見積もったところ,特に圧縮方位が[11 -3 1],[11 -8 1]である場合の変形応力の増加量は,塑性の適合性から予測される値よりも非常に大きくなっていた.
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次年度の研究費の使用計画 |
多結晶アルミニウムから双結晶試験片を効率よく作製するために振動式自動研磨機を導入する.また,マイクロメカニカルキャラクタリゼーション後の試験片から,精度のよい電子顕微鏡観察用試料を作製するために,イオンポリッシング液体窒素冷却ステージを導入する.さらに,研究成果を積極的に発表するための旅費や論文投稿料に使用する.
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