研究課題/領域番号 |
24686082
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴田 曉伸 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60451994)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 粒界 / 強化機構 / 力学特性 / マイクロメカニカルキャラクタリゼーション / 電子顕微鏡法 |
研究概要 |
材料の力学特性は内部の微視組織によって大きく変化する.特に粒界はすべり変形の変形抵抗となるため,結晶粒径を微細化すると粒界強化により力学特性が向上する.しかし,方位差,方位回転軸などの粒界性格が粒界の力学特性におよぼす影響は明らかになっていなっていないのが現状である.そこで本研究は単一の粒界のみを含んだ試験片を用いた材料試験 (マイクロメカニカルキャラクタリゼーション) により,個々の粒界の力学特性を直接評価し,得られた力学特性を粒界性格の観点から考察することによって,新たな粒界強化機構の理論モデルを提案することを目指すものである. 当該年度は純アルミニウムの単結晶と[110]を共通回転軸とする粒界方位差15度の対称傾角粒界を含む双結晶のマイクロサイズ試験片 (10um × 10um × 50um) を集束イオンビーム (FIB) 加工により作製し,フラットインデンターを取り付けたナノインデンテーション装置を用いてマイクロメカニカルキャラクタリゼーションを行った.得られた応力―ひずみ曲線を解析した結果,単結晶試験片よりも双結晶試験片の方が高い強度を有していた.また,単結晶試験片と双結晶試験片の両方とも,応力-ひずみ曲線においてセレーションが確認された.しかし,一つ一つのセレーションの大きさは双結晶試験片の方が小さくなっていることがわかった.この応力―ひずみ曲線上のセレーションはすべり変形が試験片を伝播したことに起因しているため,各セレーションの大きさが粒界強度と密接に関連していると考えられる. また,変形後の組織を透過型電子顕微鏡により観察した結果,単結晶試験片に比べて変形応力の上昇量が小さい双結晶試験片では,粒界近傍に直線状の転位が多く存在しているのに対し,単結晶試験片に比べて変形応力の上昇量が大きい双結晶試験片では,粒界近傍に転位セル組織が発達していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,マイクロメカニカルキャラクタリゼーションや変形後の組織を透過型電子顕微鏡により観察し,応力―ひずみ曲線上のセレーションの大きさが粒界強度と密接に関連していることや,変形応力の変化量の違いによって,形成される転位組織が異なることを明らかにしたためである.
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今後の研究の推進方策 |
今後はランダム粒界に注目し,まず,試料中のランダム粒界の方位回転軸や方位差などの粒界性格を走査型電子顕微鏡により得られる電子線後方散乱回折 (SEM-EBSD) により特定する.SEM-EBSDにより粒界性格を特定した粒界近傍の力学特性をナノインデンテーションにより評価し,その力学特性を粒界性格の観点から考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は,集束イオンビームの加工法改善など合理的に研究を行った結果,当初の予定よりも少ない予算で研究を行うことができたためであり,また,未使用額は基金分であるため,無理に使用せず,次年度での物品購入や旅費などに使用したほうがよい判断したためである. 次年度は,当該年度の基金残額と請求した研究費を合わせ,研究を効率よく進めるための物品購入や,得られている研究成果を国内学会や国際学会にて積極的に発表するための旅費として使用するように計画している.
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