研究課題/領域番号 |
24686084
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大野 光一郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432860)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオマス / 高炉内融着帯 / 高温その場測定 / 浸炭溶融 / スラグ |
研究概要 |
本申請課題では、震災起因木質系バイオマスをコークス代替炭材として製鉄へ高度利用することを目的として、革新的な高炉融着帯生成挙動解析システムを構築し、それを用いて融着帯内部鉱石層の軟化溶融挙動に木質系バイオマスが及ぼす影響を明らかにする。平成25年度は、高温レーザー顕微鏡を用いた木質系バイオマスと融着帯主要構成物である鉄と浸炭反応の高温その場観察と、平成24年度に作製した新型軟化溶融実験炉を用いた、もう一つの融着帯主要構成物であるスラグと高炉内炭材を模擬した黒鉛を充填した試料層の軟化溶融挙動の調査を行った。 平成24年度に行った炭材実験試料の準備において、他の木質系バイオマスと比較してユーカリ炭は含まれる灰分が少ないため浸炭反応に有利である可能性が示唆されていた。本年度行ったユーカリ炭と鉄間浸炭反応の高温その場観察では、浸炭反応に伴って生じる初期鉄融液生成温度が、他の木質系バイオマスを用いた場合よりも低くなる傾向が観察され、ユーカリ炭が鉄の浸炭反応に対して有利であることが明らかとなった。 新型軟化溶融実験炉を用いた研究においては、融着帯近傍のガス通気に大きな影響を及ぼすと考えられるスラグの溶融挙動に注目するために、融着帯近傍をスラグとコークスを模した黒鉛片で構成された試料充填層を作製し、荷重軟化試験を行った。その際、試料の設置方法は、黒鉛の充填方法を黒鉛-スラグ-黒鉛の順に装入した層状装入法と、黒鉛とスラグを混合してから装入した混合装入法でそれぞれ行った。試験中は試料層の収縮挙動とガスの通気抵抗を測定し、特徴的な挙動が観察された温度域において急冷中断試料を作製し試料層内部の断面観察を行った。その結果、従来知見と同様に混合装入法においては試料層中のガス流れが改善されることが確認され、本新型軟化溶融実験炉から得られる結果の再現性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、平成25年度は平成24年度に作製した新型軟化溶融実験炉を使用した連続実験および急冷実験を実施しており、本装置から得られる結果は従来型装置を用いた荷重軟化試験から得られる結果と比較可能な再現性が得られることを確認している。 また平成25年度には木質系バイオマスを新型軟化溶融実験炉へ用いた実験は未だ行えなかったが、平成26年度に実施予定の木質系バイオマスと鉄間の浸炭反応の評価を先んじて行っており、その結果にからユーカリ炭がコークス代替可能な木質系バイオマスの有力候補として選定済みである。 この結果は、平成26年度に行う木質系バイオマス・鉄・スラグの全てを装入した試料層を新型軟化溶融実験炉を使用した評価を行う際の有効な指針となるため、当該年度の研究進捗に大いに役立つ先行結果として位置付けられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までに新型軟化溶融実験炉を使用した連続実験および急冷実験が遂行可能であることが確認され、従来知見との比較から有意な再現性が得られることも併せて確認された。 今後は、既存設備である赤外イメージ加熱炉を備えたレーザー顕微鏡や、平成26年度に導入予定の高温X線回折分析設備によって得られる、高温その場測定結果と新型軟化溶融実験炉から得られる急冷中断試験結果を多角的に組み合わせて、試料層の軟化溶融挙動を評価し、木質系バイオマスをコークス代替資源として効果的に製鉄利用する方法を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究遂行において必須項目である、高温その場測定を可能にするための装置を導入するため、XRD用高温加熱ユニットおよびDTA用赤外イメージ加熱炉の購入に必要な直接経費を、当初申請時に計上していたが、実際配分額が大幅に減額され平成26年度配分予定額では購入が困難であり、次年度使用額を必要としたため。 次年度使用額および平成26年度配分予定額を用いても、XRD用高温加熱ユニットおよびDTA用赤外イメージ加熱炉の両装置を導入することは困難であるため、より重要なXRD用高温加熱ユニットのみを購入し、平成26年度10月に納入予定である。
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