本申請課題では、震災起因木質系バイオマスをコークス代替炭材として製鉄へ高度利用することを目的として、革新的な高炉融着帯生成挙動解析システムを構築し、それを用いて融着帯内部鉱石層の軟化溶融挙動に木質系バイオマスが及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。 平成26年度は平成25年度までに明らかにした、ユーカリ炭は含有される灰分量が少なく浸炭反応に有利な木質系バイオマスであるという事実に基づいて、平成24年度に作製した新型軟化溶融実験炉を用いてスラグ共存条件下における還元鉄とユーカリ炭間の浸炭溶融挙動の調査を行った。その結果、ユーカリ炭は従来の製鉄に用いられてきた灰分の多いコークスなどと比較して、浸炭溶融反応を高速に進めることが明らかになったが、同時に灰分をまったく含まない黒鉛と比較すると、浸炭反応が遅くなることが明らかとなった。その原因はユーカリ炭の密度の低さに起因するものであることが推測され、この結果から木質系バイオマスを使用する際には、灰分含有量の低い木炭を選択し、さらに圧密整形などによってその密度を高めてから使用する必要性があることが示唆された。また平成26年度は鉄鉱石からのスラグ融液生成挙動の基礎的な知見を収集することを目的として、本年度導入した高温XRD分析装置を用いて、鉄鉱石の主要構成鉱物層である酸化鉄相と主な脈石成分相であるCaOの混合物からの融液生成挙動の評価を行った。ここでは、これまで主に用いられてきたヘマタイト系鉱石(Fe2O3)と、今後の使用量増大が予想されるマグネタイト系鉱石(Fe3O4)の比較を行い、高炉融着帯で通気の阻害要因となるスラグ融液の生成温度がマグネタイト系鉱石で低くなる傾向を明らかにした。この成果は今後マグネタイト系鉱石ついてのさらなる研究が必要であること明らかにした。
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