研究実績の概要 |
当該年度においては,被接合セラミックスとしてZrB2-10vol%MoSi2コンポジットを選択した.なお,ZrB2-MoSi2コンポジットは2000℃,Ar雰囲気中での常圧焼結によって得られた相対密度98.2%の焼結体である.また,インサート材としては用いたUHTC(ZrB2)と同族のTiおよびZr(いずれも膜厚50ミクロン)を採用した.真空雰囲気(20Pa)下の1500℃において13MPaのホットプレスを30分保持することによって接合した.これより,界面近傍にはマクロなクラックやボイドが確認されないことから,良好な接合体が得られたことがわかった.Zrを用いた接合界面においては,コンポジットに含まれるMoSi2との反応物であるZr4SiやZr2Siなどのケイ化物が,接合層内部ではMoを若干固溶したZrもしくはZr単体が観察された.一方で,Tiを用いた接合界面においては非常に界面反応が激しく,(Ti,Zr,Mo)Bや(Zr,Mo)B2などの多元系ホウ化物や高融点のTiB結晶がウィスカー状に析出していることがわかった.また,接合層中心部に存在するTi-Zr-Si系の生成物はその組成から接合温度の1500℃において液相であることが考えられるため,Tiを用いたZrB2-10vol%MoSi2コンポジットの接合は液相を用いた接合によって行われたと判断できる.室温における四点曲げ強度はTiをインサート材とした接合体で477.7±88MPa,Zrをインサート材とした接合体で439.0±70MPaであり,ZrB2-10vol%MoSi2コンポジットの曲げ強度である376.8±77MPaを上回る結果となった.また,高温(1000℃大気雰囲気中)における四点曲げ強度はTiをインサート材とした接合体で495.3±45MPa,Zrをインサート材とした接合体で190.7±84MPaであることがわかった.つまり,Tiをインサート材とした接合体は高温環境下においても室温の接合強度を保っているのに対し,Zrをインサート材とした接合体は高温下において接合強度が半分以下に低下することがわかった.
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