研究概要 |
グリーンケミストリー技術として注目されている有機電解合成プロセスにおいて,異相反応系では多孔質電極が用いられる.本研究では二酸化炭素の電解還元反応プロセスを対象に,多孔質電極内部の反応種の輸送反応機構の解明,電解液-反応ガス間の界面安定性の把握を実測と解析の連成により行い,その知見により耐久性とエネルギー効率に優れた最適電極構造を開発することを目的とする.今年度は基礎検討として硫酸中のエタノールの電解酸化反応を対象に,白金粒子表面処理を施したチタン板電極とPTFEスペーサーを用いた1mm幅流路の流通式電解セルおよび評価用フローシステムを作製し,電流-電圧特性による電極反応評価とインピーダンス測定による溶液抵抗評価を行い,また生成物をマイクロガスクロマトグラフと液体クロマトグラフにより分析し,各電位において各種生成物(酢酸、アセトアルデヒド、CO2)の選択率,収率と反応条件(供給モル流量)の関係を評価した.高電位ほど多電子反応の選択率が上昇するが,酸素生成過電圧前後で反応速度が変化し,つまり酸素生成により電極表面への輸送阻害が顕著となり,電極表面からの効率的な気泡除去が重要であることがわかった.また反応電位域において既存のカーボン電極の劣化が起こることを確認し,耐久性および有効表面積の向上、また円滑な気泡剥離を目標に,新たな電極として気泡鋳型電解析出による多孔質銅電極の作製を試み,その電極材料としての適用可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1mmスケールの微小電解合成セルを作成し、測定システムと手法を確立した.また電解反応の電位依存性と電極材料の相関を明らかにした.なお当初は多孔質電極にRu-Pd担持カーボンなどのカーボンブラック担体を想定し,電極層ペーストの作製と塗布成形,回転ディスク電極法と限界電流法の比較による物質輸送限界の推定を予定していたが,本反応電位域ではカーボン劣化が顕著になることを確認し,他安定電極の利用により一部内容を変更した.
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次年度の研究費の使用計画 |
"現在までの達成度"に記載の通り,カーボン材料から他安定電極の利用に変更したため,当初予定していた電極成型に関わる機器導入費用を次年度使用することとし,次年度研究費と合算し,金属多孔質電極作製のための電解析出装置一式の導入により,本研究を遂行する.
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