研究実績の概要 |
平成27年度は、近赤外分光法を用いて、シリカ表面にグラフトした各種有機官能基(炭素数の異なるアルキル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基)と吸着水の同時分析を行った。アルキル鎖をもたないSiO2では、吸着水(5,300-5000 cm-1)と同時に表面OH基(4,700-4,200cm-1)を観測することができた。これに対し、アルキル鎖をグラフトしたSiO2では、吸着水と表面OH基による吸収が減少し、5,800cm-1付近にCH3基、CH2基の2倍音に帰属できる吸収が観測できた。アルキル鎖が長くなるにつれて、CH2基の吸収が大きくなることも確認した。さらには、アミノプロピル基を有するSiO2では、NH2(4,953、6,519 cm-1)、CH2(5,821、5,660 cm-1)に基づく吸収が明瞭に観察され、表面OH基と吸着水にもとづく吸収が減少した。この結果は、表面OH基を介して固定化したアミノプロピル基により表面の撥水性が強調されることを示している。一方、カルボキシル基やスルホ基を固定化したSiO2では、COOH基やSO3H基のOHがシラノールとは異なる波数に観察された。さらには、元の有機官能基をもたないSiO2に比べ、吸着水の量が増加した。これは、SiO2表面に固定化したCOOH基やSO3H基が、表面OH基よりも水分子と強く相互作用するため、表面の親水性が強調されたことを示している。 この他にも、各種アルキル基を固定化したセルロース、キトサン(セルロースのOH基の一部がNH2基として存在する材料)についても同様の測定を行った結果、表面に大量の吸着水が存在するにも関わらず、炭素鎖長の異なるアルキル基、OH基、NH2基をそれぞれ判別できることを明らかにした。
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